失敗してしまったとき、落込んでやる気がまったく起きないときのメンタルレスキュー方法、誰しもお持ちなのではないでしょうか。私の場合は「朝日楼」を聴くというのが社会人になってからの対策方法でして、これを低めの音量で真っ暗の浴室で聴くんですよ。俯瞰で見たら相当ホラーですが蝋燭を一本炊くときもあります。あとは、ぬるめの燗でもひっかけて布団に入って寝ちゃう。これで翌朝はある程度は復活です。
歌詞の悲惨さっていったらないです。救いがない。気持ちがどんどん落ちるんですが、それでも「遥か遠いニューオーリンズでこんなに苦しい思いをしてた人がいたのか」と思うと、暗い気持ちが底打ちして、ちょっとだけ上向きにバウンスするわけです。私の場合、ニューオーリンズに行ったことがないし、個人的な親和性が皆無なのが効果的なのかもしれません。これが具体的に東京のどこどことか馴染みのある地名のお話だったらまったく違ったと思うんですよね。遠ければ遠いほど、距離感があるほどにシンパシーが深まるから、不思議です。
ボブ・ディランやアニマルズのバージョンが有名ですが、ジョーン・バエズから浅川マキさんまで数え切れないほどの歌手がこの曲を歌ってきました。八代亜紀さんの最新作『哀歌-aiuta-』に“The House of the Rising Sun"の曲名を見つけたときはガッツポーズを決めたい気分でしたよね。お父さんの浪曲が原点という八代さんの「朝日楼」、味わい深いです。八代さんのハスキーボイスがしみじみと忘れられない切なさをもって胸に迫ります。
発売中SPUR4月号「ハスキーボイスの歌姫の系譜」では八代亜紀さんのインタビューを掲載。彼女がハスキーボイスにのせて何を届けたいのか? じっくり聞いています。ぜひ誌面をご覧ください。
おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。