2016.03.26

さっとひとふきにも物語を

桜も咲き、だんだん暖かくなってきました。それだけでうきうきと心が弾みますが、悲しいことがひとつだけあります。それは、毎週のように作っていた鍋が楽しめなくなること。我が家ではこの冬、毎週鍋ばかり登場していました。大げさではなく本当に。ガラステーブルにコンロと土鍋をドーンと置いて調理していますが、ガラスは汚れが目立つため、さっと拭き取れるキッチンクロスが欠かせません。無地やストライプ、ライン入りのシンプルなものでもいいんですが、先日三軒茶屋にひっそり佇むライフスタイルショップklalaにて、素敵なクロスにひとめぼれしてしまったんです。

それは、R&D.M.Co-(オールドマンズテーラー)というメーカーのリネンクロス。日本人の夫妻が、繊維業が盛んな山梨県富士吉田市にアトリエを構え、糸の生産から生地を織り仕立てるところまで自ら手がけているそう。シャツ、靴下といったファッションアイテムや、エプロン、マット、タオルなどの生活用品を展開しています。

こちらに刺しゅうされているのは、古書の挿絵で描かれているような、とある村の一日。教会へ向かう親子、井戸端会議をする4人組、野原をとぼとぼ歩く犬……。見ているだけでほのぼのとした気分になる、脱力系のタッチがたまりません。目の粗いリネン素材は、洗うほどにいい風合いになるということで、今から育てていくのが楽しみ。染みがついても、それが“味”になっていきそうな予感。鍋の吹きこぼれをさっと拭く瞬間も、ちょっとうれしくなりそうです。
日常の何気ない仕草に、ささやかながらも豊かな気持ちを添えてくれることでしょう。

 

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。