コガネムシピアス

Ｌ字のカウンターだけのこじんまりしたレストランでした。ちょうど斜め前方にそれはそれは美しい女性が食事していたんです。じろじろ見るのは失礼だわとなるたけ視線を向けないようにはしていたものの、以前から舞台も含め、作品を多々観ている女優のかただったので、つい耳をそばだててしまってはいかんいかんと姿勢を正す動作を繰り返す始末。目の端に飛び込んでくるのが、その女性が耳に付けていた円盤型のイヤリングでした。薄暗い店内でしたが、ディスクの面に光が当たって時折きらりと輝いて、そのうちこれがうっかり、モールス信号だったりたらどんなメッセージなのかなぁなどと杯が進むごとにぼんやり妄想する、なんだか妙な夜でした。

その人自身の圧倒的な美しさが記憶に焼きついて、それからなんとなく円盤型のイヤリングを探していたところに、YAECA HOME STOREで出合いました。テッド・ミューリングの「チップ」ピアス、シルバーに金メッキ加工がなされていて、ヘアラインのような細かな縦線が走っていて、少しコガネムシみたいな表情。マットな仕上がりなのでこちらはそれほど反射はしないのですが、つけるたびに脳裏にあの晩の「きらり」が蘇っています。