ブラジル人の伝説的なパーカッショニスタであり、リズムの神様であるナナ・ヴァスコンセロスが3月9日に亡くなりました。肺がんで闘病中のナナに日本のファンは折鶴でエールをおくり、それに感動したナナの提案で4月20日、盟友のエグベルト・ジスモンチと来日コンサートを行う予定でしたが、その目前にこの世を去ってしまいました。病床のナナにくれぐれもと頼まれ、ジスモンチひとりがナナ追悼公演として来てくれることになったのです。
もともとこのコンサートには「ブラジルが生んだ千手観音」というサブタイトルがついている通り(笑)、ジスモンチもナナも超絶技巧の持ち主で、楽器ひとつでこんなにいろんな音を出せるんだ! という驚きを与えてくれるアーチストです。
この日、ステージ上にはジスモンチのみ。前半は複雑なリズムを刻むギターをメインに、フルートなどいくつかの笛も吹き、後半はエモーショナルなピアノという構成。ナナを彷彿とさせる壮大な音世界を、ジスモンチひとりの頑張りで再現します。
最後にプロジェクターがステージに下りてきて、ビリンバウを演奏するナナがスクリーンに登場します(この楽器、なんとも呪術的な音色を奏でます。古代の人間の営みを彷彿とさせるようなプリミティブなビリンバウに、私はなぜか惹かれます)。弦の部分だけでなく、共鳴器の側面や底、ありとあらゆるところをたたいたり、かき鳴らしたり。すると鳥の鳴き声や水の音・・・・・・豊かで野性味あふれるブラジルの大自然が広がるかのようです。そこにジスモンチがピアノの音色を重ねていきます。これぞまさに、”音楽の魔法”を見た瞬間でした。演奏が終わるとナナは、こちらに向かって立ち上がります。そして「ハッハッハッ」と笑いながら去っていきました。拍手がいつまでも鳴りやまない、奇跡の一夜でした。
ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。