と聞かれたら、そんなの音楽が先に決まってる!と答えたいところ。もしそれが逆だったら、そのバンドの音楽も聴いたことがないのに、ロックTを着るなんて軽薄よね、と有識者に囁かれるかもしれません。しかし、その軽はずみ?な行動が功を奏したパターンをお話します。
2014年、出張でNYに行ったときのこと。アッセンブリー ニューヨークというセレクトショップの取材中、店内でこのTシャツが目に飛び込んできました。強烈なルックスに惹かれて思わず手に取ると、店のオーナーが「それ、クールだろう?友人のDARKSIDEというバンドのためにデザインしたTシャツなんだ」と話してくれました。その時点ではお恥ずかしながらそのバンドを知らなかったのですが、まぁ後から調べればいいやと購入。ところが帰国後は怒涛のNY特集入稿三昧。とてもじゃないけれど調べる暇も聴く暇もなかった。それからずいぶん時間が経ったある日、私が着ているTシャツを見た友人の「ダークサイド?なにそれ、スターウォーズ?」という指摘をきっかけに自分に課された使命を思い起こし、はじめてDARKSIDEのアルバムを聴くに至ります。
それがこのアルバム。闇に海月とおぼしき物体が浮いてます。
『Psychic』DARKSIDE (輸入版)
はっきり言って最高でした。聴けば聴くほど好きになります。まるで深海に沈みながら、はるか遠くのきらきらとした水面に思いをはせるような。暗くて、重くて、冷たくて。彼らの表現したい世界観は、このTシャツに象徴されているのね…!と深く感動を覚えました。エレクトロ系のプロデューサーであるニコラス・ジャーとギタリストのデイヴ・ハリントンが2013年に結成したこのユニット、残念ながら今はもう解散しています。とにかく最初にあのTシャツに出会わなければ、間違いなく彼らの音楽にはたどり着けていなかったと思うのです。
もう一つ、音楽ではないのですが似たような体験をした話を。FIFTH GENERAL STOREという中目黒のセレクトショップで、スリーブに描かれたカリグラフィが際立つロングTシャツを発見。店主曰く、LAの出版社Silent Sound Booksが出しているTシャツだそう。このときも、後から調べればいいやっ♪と購入。しかし今回はすぐにチェックしましたよ。すると、あのライアン・マッギンレーのアシスタントを務めていたコーリー・ブラウンという写真家が率いる出版社であることが判明。早速写真集を取り寄せてみると、これがまたすごく良い!
『A Recurring Dream』Coley Brown/SIlent Sound Books
雄大な自然を風景としてではなく、グラフィカルな模様として捉える写真が独特の空気感をたたえます。時間を忘れて眺めていられる……。
ときとして一目惚れしたTシャツが、その背景にあるカルチャーと出会うきっかけとなることもある。そう考えると、Tシャツが先で、音楽があと。それも悪くないかもなぁと思えるのです。
ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。