最後の独りとなってしまった丑三つ時、いるはずのない背後から視線を感じて振り向くとネコリョーシカだった。その瞬間、独りぼっちの私の脳内には大好きな天地真理さんの「「ひとりじゃないの」のサビが鳴り渡るのでした―私の残業あるある物語です。ヒグチユウコ先生の猫型クッション「ネコリョーシカ」は編集部の奥に鎮座していて、皆が仕事するのを無言で見守る、お地蔵さまのような存在です。
以前インタビューしたとき、ヒグチ先生はこんなことを言っていました。「ただ可愛いものだけでなく、人間が本能的に惹かれるものに近づきたい。女の子だったらひらひらと舞うレースや甘いお菓子には抗えないですよね? でもそれに相反して、私はグロテスクなものにも魅力を感じるんです。その両方が共存する世界を描きたい」。
ヒグチ先生の新作「すきになったら」(ブロンズ新社刊)は、老若男女にかかわらず、私たち全員が抱く感情を、少女の視線から描いています。彼女が「すきになった」相手は誰なのか? 宝物のように素敵な絵本のページを、捲ってみてください。
エディターIGARASHI
おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。