行くルージュ、来るルージュ

ルージュ アリュール ラックというラッカー状のリップカラーがありました。見た目そのままの色がしっかり唇にのる。口紅ではなく、アプリケーターでそのまま色材をのせるから色が圧倒的に強い。シアーな口紅が潮流の中心だった当事は画期的なプロダクトでした。その潔さと発色の素晴らしさ、硯のような色が艶やかなクラシックで重厚なパッケージ、すべてが私には完璧でした。とくに75番ドラゴンという真紅は「やっと出会えた本当の赤だ」と喜び勇んで2本購入。この漆黒の小さなボトルひとつあれば、どこにでも出かけられる―そのくらいに思ってました。大切なお守りでもあったこのルージュ、ところが3本目に突入したところで事件は起きるわけです。こちらの商品は残念ながらなくなりました、とカウンターで宣告されたのが2年ほど前。ルージュ アリュール ラックはあっけなくこの世から姿を消していたのでした。こんなに素晴らしいのになぜ廃盤に……とがっかりしたあのときから月日を経たこの秋、シャネルのリキッドリップカラーが復活したんですよ。

先週金曜日に発売になったその名前はルージュ アリュール インク。ラックがインクになりました。ボディ部分はすりガラスとなって、中の色が見えるデザインに。以前のラックがよりリッチで重厚感あるテクスチャーだったのに対し、インクはさらりと、でもしっかりと唇にステインするフォーミュラに進化しています。最大の特徴は仕上がりの質感。ほどよくマットに仕上がります。ボトルのすりガラスのイメージにぴったりの心地よくツヤをおさえた仕上がりに、思わず納得。アプリケーターの形状も、ラックは薙刀型だったのが、インクでは両サイドで塗布できるフォルムに代わりました。こういう液状のリップこそ、強い色でこそ真価を発揮すると私は思っています。ワンストロークで顔立ちそのものが変わる発色力は、ぜひ写真左の154番エクスぺリモンテで試してみてください。

「赤」を打ち出したルチア・ピカの第二章のステートメントが、ここにあります。

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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