モードと「ほめられ」は両立するか? するんです。

以前は赤文字系読者やOLをターゲットとした雑誌の編集をしていました。ですから読者の方が知りたいと思う、「ほめられる服」については随分研究したものですよ。上司にほめられる服、女友達にほめられる服、彼にほめられる服……。だから、SPURというモード誌に携わることになり、「他人ではなくいかに自分がいいと思う服を着るか」「いかに他人とは違う己らしいスタイルを追求するか」「いかに世の中の価値観をひっくり返すスタイルを生み出すか」という視点を得たときは、新鮮でした。そしてなんだかすごく自由になった気分でした。

というわけで今までの反動もあって、(少々傲慢に聞こえるかもしれませんが)、「他人の目線なんてどうでもいいや」という気分に、しばらくなっていました。

ですが最近、ほめられたんです。そうしたらやっぱり嬉しかった。浮かれました(笑)。具体的に言うと、それほど格式張ったドレスコードのない、夜のちょっとしたパーティで、mameのドレスを着ていったら。

mameの服にはファンが多いですが、私に関して言うと、きちんと袖を通したのはお恥ずかしながらこの服が初めてです。着てみて鏡の前に立ち、いろんなディテールに「これもいいなあ、あれもいいなあ」となりました。

ミニドレスといえば可愛らしい印象になりがちですが、立体的なボックスプリーツがシャープなかたちを作り、甘すぎない仕上がりに。前と後ろのウエスト部分に2本ずつ入ったダーツが腰から胸、腰から肩甲骨のラインをなだらかに立ち上げ、美しく見せてくれます。そしてスカート部分、前はヘムにかけてストーンとまっすぐに落ちていますが、後ろは切り替えがあり、ヒップをきれいにカバーしてくれます。つまり、グラマー感に欠ける日本人のボディをほどよく立体的に見せるよう計算されているんです。

私がこのドレスで二番目に好きなのはデコルテ部分。首を隠してデコルテを見せる、というコントラストが最高です。これ見よがしに誰かにアピールするというよりも、着ている本人がセンシュアルな気分を味わえるデザイン。スリットは結構深く開いているので、胸が大きい方だとちょっとセクシーになりすぎるかもしれません。私みたいなぺたんこ胸におすすめです。ちなみに、この首元のデザインはちょっとチョーカー的にも見え、今の気分も味わえます。

そして、一番のお気に入りは袖です。ここは透ける素材に切り替えられています。ハイ、皆さんご注目、最大の「ほめられ」ポイントですよ! 写真じゃわかりづらいですが、ここにラメ糸が織り込まれています。昼間に撮った写真じゃわからないほどさりげないのに、夜になるといい感じに光ります。先述した夜のパーティではきれいに光っていたようで、モード番長的な存在の方や、華やかなものが好きなミーハー編集者にもかなりほめられました。ちなみにほめてくれたのはすべて女性でしたけど。

このジャカード織の袖ですが、桐生の工場で織っているオリジナルの生地です。図案はデザイナーの黒河内真衣子さんが自ら描いたもので、古い壁紙や絨毯をイメージしたもの。今、世界の名だたるメゾンが日本の服作りの技術を称賛し、仕事をともにしているのはご存知でしょうか。黒河内さんはそのような技を持つ職人や工場に足を運び、一緒にものづくりをしていらっしゃいます。ほめられたときにそんな素敵なストーリーを語れる、というのも嬉しいじゃありませんか。

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エディターNAMIKI

ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。

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