――野球少年みたい。
これは私が学生だった頃、当時のボーイフレンドに言われたひと言です。彼が言ったのは、見た目のことじゃありません。外見だったら、坊主頭の彼の方がよっぽど野球少年みたいだったし。じゃあ一体どういうことか。大変恥ずかしながら、私の頭の匂いのことだったのです。どうやら私の頭から、部活で使っていた野球帽と同じような匂いがしたらしい。いろいろ弁解の余地はありますが、それでもめちゃくちゃショックでしたね。自分よりよっぽど野球少年みたいなヤツに「野球少年みたい」って言われたんですから。その時はもう私の人生終わったなって思いました。
でも考えてみれば、私よりも頭ひとつ分背の高かった彼は、自分のちょうど鼻の下あたりに私の頭があるという状況にたびたび晒されていたのでしょう。そう思うと、ちょっと申し訳ない気持ちにもなったり、ならなかったり……。
この事件を機に、頭の匂いに関しては人一倍敏感になりました。毎日頭からいい匂いを放ちたい。「歩くアロマ」と言われたい。その一心で、大好きだった唐揚げを控えたり、香りの強いシャンプーを使ってみたり、まあ色々試しました。頭に香水を振りかけていた時期もありました。
おかげさまで近頃は「野球少年」呼ばわりされることもなくなりましたが、やっぱり気にする時はあります。一番は何といっても電車の中。満員電車で後ろに背の高い人が立ったりすると、今この人は私の頭を真ん前に突きつけられて「野球少年みたい」と心の中で思っているのではないか?とソワソワして、思わず頭をハンカチで覆いたくなります。やりませんけどね。
こうして、野球少年のトラウマをちょっぴり引きずりながらも、最近愛用している心強い味方をご紹介させてください。Leonor Greyl というパリのヘアサロンが開発したオイル「ユイル レオノール グレユ」。パーム油を主成分とした複数オイル配合で、とにかくすごくいい匂いです。ナッツの甘さをほのかに含んだフローラルな香りですが、「香水」然としてないのがとてもいい。
フレグランスはよく使いますが、どんなに好きな香りでも、つけた直後は”香水つけました”という匂いを振りまいちゃうので、周りに苦手な人がいたら、どうもスミマセンと肩身が狭くなりそうなシチュエーションもあります。でもこのオイルは、香りこそ濃厚ですが、髪につけた瞬間からとてもいい感じに馴染んでくれるんです。私、もともとこういう匂いなんです、って言われても納得できるナチュラルさがあります。
実際にこれを使い始めてからは、香水や柔軟剤を使ってなくても「いい匂いがする」と言われるようになりました。電車でいきなり隣の席の人に「ものすごくいい香りがするのですが、何使ってます?」と前のめりに聞かれたことも。いい匂いがすると言われるたびに、嬉しくなりつつ、ホッとした気持ちになっています。
もちろん、香りがいいだけじゃありません。トリートメント効果も素晴らしいです。パーマやブリーチを繰り返していて、髪に対しては相当バイオレンスに生きてます。なので臨終してしまった自分の髪を少しでも安らかに眠らせてあげることに日々注力しているのですが、その点でもこのオイルはかなり優秀。
使い方はいくつかありますが、私はもっぱらシャンプー後のスタイリング剤として使っています。タオルドライした髪にパール粒大をとり(少量で十分です)、毛先を中心に揉み込んでからドライヤーで乾かします。するとたちまち鳥の巣状態の髪がツヤを取り戻し、しなやかにまとまってくれます。
ひとつ難点なのは、常温だとオイルが白く固まってしまうこと。とは言ってもカチカチに固まるのではなく、スムージー状になるイメージ。付属のピッカーで簡単にすくえるし、手にのせればすぐに溶けるので、まあそこまで気になるほどじゃありません。頭からいい匂いをさせたい方、髪のダメージが気になる方には、自信を持っておすすめします。
ちなみにこのオイルは、代官山の人気ヘアサロン、CHAUSSE-PIED EN LAITON でも使われています。SPUR本誌やWEBでもご紹介したことのある素敵なサロンなので、あわせてチェックしてみてください。
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生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。