眺めて惚れ惚れ、身につけて惚れ惚れ、というアイテムがあります。このサンローランのジョッパーブーツがまさにそれ。デザイナーがエディ・スリマンの時代に発売され、昨年秋に手に入れました。
クラシカルなアイテムなのでコンサバに見えてもおかしくはないのですが、さすがはエディ様、絶妙なフォルム調整でモードなシャープさを宿しています。長いヴァンプはときにいやらしくなりがちですが、甲の幅が細いのと、つま先がとがりながらも少し丸みも残しているので、とても品がいいのです。きれいなワンピースにも合いますし、甘めのスタイルにちょっとエッジをきかせるということもでき、とても重宝しています。
履き入れ口がタイトで着脱に気合がいること、足がむくむと甲がパツパツという点ではやはりエディの作るもの、ストイックさが求められますが、絶大な脚長効果も考えるとパーフェクトな逸品だと思います。スエード素材でカラーバリエーションもいくつかあり、「色ち買い」を検討しているくらい。
エディ・スリマンのサンローランは、小柄でやせ型の日本人におすすめだ、とファッションプロたちは口を揃えて言います。ランウェイや広告ビジュアルは、「ロックマインドがある若い女性じゃないと着こなせないのかしら」と思わせるのですが、実際に店舗に行って服を手に取るととても「きれい」に作られているとわかります。「きれい」と言うのは、服そのものが凛として上品な佇まいである、ということと、実際に着る人の体型を美しく見せる、という意味で。モードラバーではない方にも「長く着る上質な服」として訴えかけるものです。
ちなみに皆さんもご存知の通り、エディ・スリマンは退任し、現在はアンソニー・ヴァカレロがクリエイティブ・ディレクターに。彼のファースト・コレクションを見て、一部の日本のファッションプロの頭には「世界的に評価は高いとしても、彼の作るゴージャスでセクシーな服は日本人女性には難しいのかも……」という思いがよぎりました。「エディが築き上げた素敵な面が、一気にまた変わってしまうのか?」と心配したサンローランファンも。ですが、店舗や撮影で実際に服を手に取ったスタッフの反応は上々。
私も店舗に足を運んでみましたが、エディ時代の、評判の高いエッセンシャルなアイテムは継続しています(実際に上のブーツも2017年3月7日現在、まだ販売されています)。そこにアンソニーのコレクションがマッチしつつ新しい息吹を吹き込んでいるのです。
今季、ディオールの新ディレクターに就任したマリア・グラツィア・キウリは過去の歴代デザイナーのコレクションをリスペクトする新作を生み出しました(詳しくは、発売中のSPUR4月号を!)。ファッション業界にとって難しい時代、デザイナーやディレクターが短いスパンで変わることも多いですが、先人がせっかく知恵と情熱を振り絞って創り上げたものをきちんと継承していく姿勢って素晴らしいなと思います。
ジュエリー&ウォッチ担当。きらめくモノとフィギュアスケート観戦に元気をもらっています。永遠にミーハーです。