また来てね、ポール

愛娘ステラのショーをフロントロウで楽しむポールを、パリで何度か目撃したことがあります。いちばん最初はクロエ時代だったのですが、あのポール・マッカートニーが!!!すぐそこに!!!と心中大興奮も、ファッションウィーク独特の雰囲気のなか大騒ぎする度胸がなく、チラチラと眺める程度に終わったものでした。カメラを向けるのも憚られたあのときのポールとの距離、およそ20mほど。

3年前、銀座の仕事のあとに外堀通りをタクシーで走っているとき、信号待ちで立派な黒いバンと横隣りになりました。スモークガラスの向こうには、なんとポール。ホテルからドームに向かう途中のポールに思わず「わっ!ポー!!」と車内でシャウトし、その後意図したわけではないものの2回の信号待ちでぴったり隣に付けるたびにまじまじと眺めていた結果、案の定訝しく思われて不自然に車間距離を取られる羽目に。あのときのポールとの距離、2mほど。

そして昨晩のドーム。遥か彼方の2階席にもポールの体温はしっかり伝わってきました。噂には聞いていましたが、32曲を水を呑むことなく歌い切るポール。大きさ5ミリくらいのポールを双眼鏡でガン見し続けましたが、本当に休まない、水で喉を潤して一息…という瞬間さえないんですよ!

その後、アンコールの7曲を含めて合計39曲。あのエネルギーは一体どこから来るのか。なかでもジョージの〝SOMETHING"のウクレレバージョンや、ポールへのサプライズだった観客全員が手にする青いサイリウムで染まった〝Hey Jude″の大合唱の情景は、一生忘れないと思います。

この政治情勢下にもかかわらず、はるばる日本までやって来てくれたポール。昨晩の距離は200mほどだったと思うのですが、すぐそこにポールの心を濃密に感じたかけがえのない時間となりました。

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エディターIGARASHI

おしゃれスナップ、モデル連載コラム、美容専門誌などを経て現職。
趣味は相撲観戦、SPURおやつ部員。

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