反抗期のTシャツ

プリントTシャツは「なんだこれ?」っていう引っかかりがあるものが好きです。最近いちばんヒットしたおもしろTシャツを紹介します。EDITIONにて、PCのペイント機能でマウスの扱いに慣れない人が描いたようなガタガタとしたタッチが妙に気になって、手に取りました。

こちらのTシャツは、Yang Li(ヤン リー)というブランドから発信される、SAMIZDAT(サミズダート)という新ラインです。北京出身のヤン リーは、セントラル セントマーチンズで学んだのち、ラフ シモンズのもとでインターンの経験を積んだテーラリング技術に定評のあるデザイナー。90年代のミニマリズムが持つクリーンなムードと、スケートボードやバスケットボールから影響を受けたストリートなテイストが融合するブランドです。このSAMIZDATというラインは、服と音楽が出合うプラットフォームになるようにとローンチされました。ちなみにSAMIZDATとは、ロシア語で自主出版という意味。ソ連時代に発行禁止とされた書物を地下でこっそり複製し、流通させていたムーブメントのことを指します。そんな話をEDITIONのショップスタッフのお兄さんから一通り聞くと、この不気味なプリントも急に意味のあるものに思えてくるから不思議です。

そしてこのヤン リーというデザイナー、かなりディテールにこだわるタイプらしく。Tシャツのタグには「FANTASY」と書いてあります。これは、FRUIT OF THE LOOMやHanesといったTシャツブランドにオマージュを捧げた、ヤン リーによる架空のTシャツブランド。でもタグをペロっとめくると、裏にちゃんと「YANG LI」と刺繍されています。おちゃめですよね。

とどめの一撃は、ショルダー部分のテーピングと、表地のアームホールにあえて出されたシームラインによって、肩のラインがへたらずにシャープにみえること。ゆるいプリントのTシャツなのに、だらしなくみえない。テーラリングに定評があるデザイナーによる、うれしいひと工夫なのでした。



そんなこんなでお店で手に取ってからものの15分。スタッフのお兄さんのスペシャルトークによって、じわじわとこのTシャツの魅力に取りつかれて購入することに。禁書物をこっそり複製するという、反抗心をくすぐるライン名が最大の決め手かもしれませんが。

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。

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