2017.06.01

時計をめぐる冒険

フランスの老舗時計ブランドlip(リップ)といえば、ポップなデザインウォッチであるMACH2000が有名です。が、ある日、文字盤に書いてあるのはlipのロゴだけど、こんなのある?という不思議なデザインの時計にインスタグラムで出会いました。

角ばったゴールドのフェイスの中に、小さなアンティーク風の文字盤。デザインされているのに、不思議とシンプルなモダンさがある時計。一目でものすごく心惹かれてしまい、今のlipのデザインの感じを見るに、たぶんこのインタグラムの時計はヴィンテージなんだろうと狙いをつけて「lip vintage watch」で早速画像検索しました。すると、あのインスタグラムで見たデザインが! ページを開いてみると、この時計は、1976年製のlipのヴィンテージ。そして、デザイナーIsabelle Hebeyとlipのコラボレーションであることが分かりました。さらにIsabelle Hebeyって誰ぞ!と、追い込み検索をかけると、なんと彼女は60~70年代のムッシュ・サンローラン時代のリヴ・ゴーシュのお店のインテリアデザインを手がけた人だったのでした(不勉強でお恥ずかしい)。

あの時代のサンローランに象徴される、未来的なムードとクラシックなエレガンスが確かにこの時計にもあるじゃない!?と、このモードな情報でボルテージは急上昇。今度はどこでこれが買えるのか、を鬼の検索です。

全身全霊の検索をかけた結果、lipのホームであるフランスのヴィンテージウォッチのネットショップに1点だけあの時計を発見。いつも軽はずみなお買い物のことをスモールグッドシングスであげている私ですが、実はわりと用心深いタイプなんです(知るか!って感じですよね)。だから、よく知らない海外通販に自分のカード番号を打ち込んで買い物をする、って実はあんまりしたくない。英語力もあまりないので、これで騙されたら泣き寝入り確定ですから。でも、泣いても笑ってもここにしか売っていない! 結果、やっぱり軽はずみに清水の舞台から飛び降りてみました(というほど莫大な値段ではないんですけど)。

かくして、「ほんとにアレ届くかしら……」と震えながら待つこと一週間。ある日宅配ボックスを開けたら、テープでぐるぐる巻きにされたぼろぼろの段ボールの小箱がありました。この明らかに海外の粗悪な包装事情を体現した包みは!とはやる心を抑えて、ぐるぐるのぼろぼろをさらにぼろぼろにして開けたところ、出会えましたよ、lipさん! なんとデッドストックだったのかベルトもオリジナルの未使用で、スペアもついた美品でした。疑ってごめん、フランスの時計屋さん……。かくして、この時計は無事に私のもとに。

身に着けてみたら、最近の70年代リバイバルのムードもあってか、自分の気分にもファッションにも、想像以上にぴたりとはまるデザインに改めて驚きました。40年以上経っても全く古びないセンスって素晴らしい。もちろんデッドストックでこんなルックスですが、きりきりとリューズを巻いたら、きっちり動いてくれるかわいいヤツです。小さいながらいつも目に入ってくる時計が、こんなにも仕事のモチベーションをあげてくれるんだ、というのも新鮮な発見。遅まきながら、「時計はする派」への転向を誓った夏のはじまりでした。

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エディターTOTOKI

ファッションと占い担当。おしゃれは我慢、ができないので、着心地重視。休みの日は、大体インテリアのことを考えています。