盆休みに滞在したヘルシンキは気温20度くらい、湿気がないので快適で過ごしやすく、21時半ごろまで日が沈まないので、あれもこれも見て回りたい観光にはもってこい。
前回紹介したミュールマキ教会に続いて訪れたのは、ヘルシンキ中央駅近く、ショッピングセンターやレストランが並ぶ賑やかな地区に立つカンピ礼拝堂(Kampin Kappeli)、別名「静寂の礼拝堂」です。
2012年完成、モミの木とハンノキを使った木造建築は、石畳の街でひときわモダンな存在感を放つ外観。写真ではちょっとわかりにくいのですが、卵型のスペースが上に向けて広がっていく構造をしています。
ぶ厚い木の扉をあけて礼拝堂に入ると、しんっ…としていて心地よい緊張感が空気に満ちています。いい喫茶店に入った瞬間、先客全員が静寂を共有しているのを察知するあの感触を、精度をぐっと高めたバージョンと言うか(身近すぎる例ですみません)。
長椅子に座って見上げると、天井にぐるりと設けられたスリットから自然光が差し込み、木漏れ日に包まれているような、意識が上方にひっぱりあげられるような、不思議な感覚がおとずれます。「木=ぬくもり」という図式だけでは語れない近未来的な空間。つるっとした曲面の壁をぼんやり眺めていたら、SF映画で描かれる宇宙船のなかはこういう感覚がするのかもしれないという気がしてきました。
滞在中に二度訪れましたが、どちらも礼拝堂に入ってくる人々はみな無言で圧倒され、じっと瞑想をしている姿もみかけました。ふと、結婚式をするならこんな空間がいいなと勝手な妄想をしたのですが、結婚式やミサなどいわゆる教会の儀式は行われていないそう。人々が日常の喧騒から離れ、心安らかに内なる声に耳を傾けられるように、ヘルシンキ市の社会福祉課と教会が協力して運営しているそうです。ヘルシンキを訪れた際にはぜひ足を運んで欲しい場所です。
日々、モード修行中。メンズとレディースを行ったり来たりしています。書籍担当。どうぞよろしくお願いします。