普段は「緊張しない、させない服」を選んでいます。人一倍緊張するタチなので、服にはできるだけ優しくされたいのが本音。着心地がよくて、ゆったりした気分でいられる服が日常のパフォーマンスを維持するうえで欠かせません。ジャケットよりも断然ニット、ヒールよりスニーカー派です。また仕事柄、少人数での打合せが多く、相手を警戒させずに和やかな雰囲気で会話できるという思惑も。
そんな保身を飛び越えて、ランウェイで出会った瞬間に一目惚れし、NY出張の合間にショップでサイズ違いを試着しまくって鼻息荒く手に入れたのが、カルバン・クライン 205W39NYCのシャツ。
日頃の服の効用を「オフ」とするならば、こちらは完全に「オン」。でもいわゆる勝負服ではなく、「どうしてもこの服をかっこよく着たい!」と自分を鼓舞し、どこまでも自分の願望を充足するための服だと思います。
細く長く、美しいシルエットをキープする袖。ボトムのウエストめがけてスッと吸い込まれていくような計算された身頃のライン。緊張感のある高いネック。鏡の前でいつもと違う自分のシルエットに「私、こういう可能性もあるんだ」とちょっと嬉しくなったりして。もう、これを着ると背筋を伸ばさざるを得ない。
出番が多いわけではないのですが、今シーズン、本当に買ってよかったと思っている服です。きっと出番が多くなくたっていいのです。クローゼットのなかにスイッチが入る特別な服があるだけで、モードの魔法を信じられるから。
日々、モード修行中。メンズとレディースを行ったり来たりしています。書籍担当。どうぞよろしくお願いします。