2018.05.24

ぷっくり、しあわせりんご

みなさんは、見ていると幸せな気持ちになるモチーフってありますか?わたしは、りんごに弱いんです。思い出すのは、幼い頃母がよく作ってくれた、りんごがゴロゴロ入ったケーキ。今でも無性にあれが食べたくなります。小学校低学年ぐらいのときでしょうか。宿題を終えた日曜日の午後、オーブンから漂う甘酸っぱいりんごの蜜のにおい。それが鼻をくすぐると、「もう焼けるよ」のサインです。あのときのなんとも言えない、満たされていく感覚は今でもくっきりと思い出せます。見た目は不格好だけど、余計な味がしなくって、自然な甘さ。そんなおいしい記憶とりんごが結びついているんです。

先日ロンドンの蚤の市で出合った、可愛いりんご。たくさんのヴィンテージ・ジュエリーの山の中からこれを見つけたとたん、またあのときの幸せな気持ちがよみがえり、思わず条件反射的に手を伸ばしていました。
クリア・アクリルにカボションカットがほどこされ、ぷっくりと愛らしいシェイプに仕上げられています。ピンクと赤の中間のようなカラーにも、きゅん。光に透かして眺めていると、店主のおじいさんが「サラ・コベントリーの70年代の"バーガンディ"コレクションだよ」と教えてくれました。そうか、この曖昧な色味はバーガンディなのね。コスチューム・ジュエリーならではのキッチュさと、時を経たことによる味わい深さのバランスが絶妙で、ブローチとイヤリングをセットで購入。なかなか合わせるのが難しいのですが、見ているだけでもうれしくなるので、ときどき眺めてはにんまり。そうだ、今度これをつけて、何人か家に呼んで、りんごのケーキを焼いてみようかな! と今これを書きながら思い立ちました。

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。