大人にも贈りたい絵本の話

先日、大きな封筒が編集部に届き、開けてみたら素敵な絵本が現れました。このかわいい猫の表紙が目印の絵本は、マルーさんによる『わたしのものよ』(WAVE出版)。

マルーさんのことはよしもとばななさんの書籍の装画で知りファンになり、当時私が担当していた占いページのイラストをお願いさせていただくご縁がありました。鮮やかで夢見心地なイラストが素敵で、それ以外にも漫画を描かれるなどご活躍なのですが、今回は絵本。

小川洋子さんの言葉による帯にも誘われてワクワクしながら本を開くと、そこにはおしゃまでちょっと気位の高い猫のサカナちゃんが登場します。マルーさんのイラストは緻密さと大胆さが混ざった色彩豊かな作風で、その美しさが存分に生かされた絵には文字を読まずともどんどんめくっていきたくなる吸い込まれるような力があります。が、しかし、文字を読みはじめるとやさしい言葉の中にも、マルーさんからのメッセージがありました。タイトルの通り、「わたしのものよ」とお姫様気質のサカナちゃんは、最後にあることに気がつきます。ネタバレになるので、ここには書きませんが、子供のようにまっすぐな心でサカナちゃんがたどりついた言葉は、大人の私が読んでいてもハッとさせられるものでした。

この絵本を読んで、タイムリーに思い出したのは、「こどものいのちはこどものもの」というハッシュタグ。犬山紙子さんや坂本美雨さんらが、先日目黒区でおきた児童虐待事件を受けて、こどもの虐待を食い止める力になろうと発足させた会の名前でもあります。ここで書くにはかけ離れた内容のようにみえるかもしれませんが、美しいものを美しいと素直に思い、着たいものを着る、食べたいものを食べる、という当たり前に普段していることは、当たり前の権利を守られた後にしか手にすることができないものだったりします。絵本のエンディングとこのハッシュタグの言葉は、厳密には違うのですが大きな意味では思いはひとつなのではないかと。こどもも、猫も、老人も、最初から最後まで人生を「わたしのもの」にする、ってどんなことだろう。命って誰のものなのか。そんな物語のその先を考えさせられる光に満ちた一冊です。

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エディターTOTOKI

ファッションと占い担当。おしゃれは我慢、ができないので、着心地重視。休みの日は、大体インテリアのことを考えています。

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