まるまる一冊、シモーン・ロシャ!

フランスのインディペンデントマガジン「A MAGAZINE curated by」。毎号異なる世界的デザイナーがディレクションを手がけるのが特徴。過去にはハイダー・アッカーマンやヴェロニク・ブランキーノ、マルタン・マルジェラ、トム・ブラウンなど、錚々たる面々がキュレーターとして名を連ねています。魅力は、それぞれのデザイナーの世界観がまるまる一冊堪能できること。そもそも紙の手触りに親しんできた身としては、雑誌というパッケージがそもそも好きでして。いま彼らが表現したいことが、テキストや写真という形で表現されているんです。

最新号となるissue18のキュレーターは、私やSPURを読んでくださっているみなさまも好きであろうロンドンベースのデザイナー、シモーン・ロシャ! 発売を知ったときから虎視眈々と狙っておりました。

巻頭言で編集長、ダン・スローリーが語るとおり、アートとの繋がりや社会的、政治的なものごととの繋がりなど、彼女自身が色濃く反映されたコンテンツで構成されています。特に印象的なのは、アイデンティティを形作った家族の存在。1986年、香港人のファッションデザイナーである父、ジョン・ロシャのもとアイルランド・ダブリンに生まれたシモーン。「アイルランドは私にとって故郷のよう。そして故郷とは私の心がある場所のこと。香港の家族は遠く離れているけれど、常にそばにあるものです」。そう語ることからわかるように、とてもパーソナルな一冊なんですよね。彼女のルーツをゆっくり辿っていくように読み進められます。

肝心の中身もちょっとご紹介させてください。まず目を引かれたのは、シモーン・ロシャの服をまとった人々のモノクロのポートレート。

▲香港で多くの国際的なデザイナーズアイテムを有し、販売する「Joyce Boutique」を設立したJoyce Ma。人選にも彼女のルーツが感じられます

▲父親に抱かれたシモーンの幼少期の写真(左ページ左下)と、母親のオデット・ロシャ(右ページ)

人々の穏やかな表情と、ロマンティックなウェアが重なって、なんともいえない美しさなんです。他にもシモーンが以前のコレクションでもインスピレーションの源に挙げていたルイーズ・ブルジョワをテーマにしたストーリーも必見。彼女の嗜好のバックグラウンドが浮かび上がってくるよう。釣り好きな父、ジョン・ロシャによるフライフィッシングのエッセイとファッションフォトのテーマもあったりして、にじみ出る人間味もいいんです(笑)。

サラ・グレース・ワラーステッドをモデルに上海で撮影されたページもロマンティックな儚さに満ちていて素敵ですし、サラ・ムーンが撮り下ろした企画ももちろん美しく、もうお腹いっぱいです!私。

▲クロエ・セヴィニーもニューヨークから参戦!

まさにまるごと一冊、「読み込める」シモーン・ロシャ。ファッションのコレクションとはまた違う形でデザイナーを知れる貴重な機会。手もとにずっと置いておきたい一冊です。

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エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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