「子供のころ読んでいたなかで、好きだった絵本ってなに?」と母から急にメッセージが来ました。なんでも、絵本について調べごとをしているとのこと。そこでいろいろ母と話していて、安房直子さんの紡ぐ物語が大好きだったことを思い出したんです。何度も何度も同じシーンを読み返していたわくわくとした気持ちがぶわ~っとよみがえり、早速お気に入りだった3冊を取り寄せました。
名作ばかりなので、みなさんも一度は触れたことがあるのではないでしょうか。改めて読んでみると、絵本の中に広がる世界観がいかに自分の持つ趣味嗜好、スタイルに影響を及ぼしているのかを実感。好きな写真や絵画、映画、音楽の中に流れるエッセンスは、大部分ここから来ていたのかもしれない……とさえ思ったのです。
安房直子さんが描く物語には共通項があります。まず、ものすごく絵がロマンティックであること、次に、花や果実、木といった「自然」がファンタジーの舞台になっていること、そして秘められた不思議な世界への入り口があること、最後にちょっとだけセンチメンタルであること。普段は忙しくて忘れているけれど、旅行で花畑に出くわしたとき、帰り道に不意にたんぽぽを見つけたとき、一瞬だけ胸にそよ風が流れるようなあの感覚は、すべてここに端を発していたんだなぁと感じました。
桜の木の根元に靴屋さんを見つけたり、ねずみに呼び止められたり……。もしかしたら道を歩いていると、いきなりそんなことが起きるかもしれない。本気でそう信じていたあの頃にはもう戻れないけれど、ときめきは呼び覚ますことができます。みなさんの、「マイ・センチメンタル・絵本」はなんですか?大人になった今、改めて読んでみると、自分の心の底を見つめなおすいい機会になります。
ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。