1950年代に活躍したデザイナーといえば、クリスチャン・ディオールですよね。でもそれはヨーロッパを中心に見たときのこと。モード史ではあまり扱いが大きくありませんが、アメリカンファッションにおいて、それはクレア・マッカーデル。女性のファッションデザイナーです。そのデザインはクチュールライクなものではなく、スポーツウェアをベースにした機能的な服。社交界の婦人たちではなく、中流階級の、いろんな体型の女性に向けて作られていました。私のイメージは、50年代のフィービー・ファイロ!
そんな彼女のファッション指南本『わたしの服の見つけかた』がとても面白い。ファッションにおけるTPOや、男性との関わりなど時代的に気になる箇所もありますが、自分のスタイルを作り上げるためのアイデアが楽しいんです。
特に好きなのは「ベーシックなコートは買わないで」という章。クレアさん、最高のコートを一枚だけ、という考え方に反対なんです。毎日毎日同じコートなんてつまらない。元手を取る前に飽きてしまうと断言! 長いの、短いの、ケープ型、ウールに、スエードなどなど。いろんなコートで楽しみましょう。その分、手軽な価格のモノでいい、と言ってくれる。巷に溢れるスタイル本とは真逆ですよね。
「小さなアクセサリーコレクション」の章では、クレアさんの愛着あるアイテムが紹介されていますが、高価なものでも、ブランドものでもなく、可愛らしくて、ウィットがきいたものだったりする。それで、思い出したブレスレットがあります。20歳の時、はじめてひとりでパリを訪れ、蚤の市でみつけたもの。パーツごとに絵柄が違って、なんて可愛らしいんだと一目惚れしたあの瞬間。買って、一度も身につけてないけれど、何度引っ越ししても手放せなかった品です。ブランド、価格問わず、自分が好きになったものを身につけていいんだと背中を押してくれました。2019年、クレア・マッカーデルにならって、自分のスタイルを考えてみませんか?
顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。