2019.01.29

香水とかけて、短歌と解く。その心は…

最近、短歌を詠む人が増えている、そう知人に教えてもらったのは、昨年の秋のことでした。短歌というと、学生時代に古文の授業で習った万葉集や百人一首のイメージだったのですが、今は、20代、特に女性の歌人が増えているのだそうです。そう耳にしてさっそく手に取ったのが、服部真里子さんの『遠くの敵や硝子を』(書肆侃侃房)。


この歌集を読んで驚いたのは、現代の言葉で短歌を詠めるのだ、ということ。もちろん、古文の授業で習ったような短歌だけでなく、口語で詠むフレッシュな短歌が一斉を風靡し、社会現象になったこともあるので、これは当たり前のことかもしれません。ただ、服部さんは今の言葉を使いながらも、古典のような凛とした風格をもつ稀有な歌人だと思います。

夜をください そうでなければ永遠に冷たい洗濯物をください

歌集の帯にもひかれているこの一首は、どこか絶望的な気持ちを美しい単語にくるむことで、すっと心の内側に入っていきます。持っていても役に立たないものが欲しいとき、それはきっと何かに悩んでいるときだと思うのですが、"永遠に冷たい洗濯物"と詠むことで、個人の悩みも文学の香りを帯び、どんどん意味が広がっていきます。

そんな服部真里子さんに、新しく短歌を詠んでもらい、SPUR3月号の「はじまりの季節を詠む香り」特集ができました。香水と冬から春への季節の移り変わりをテーマに、短歌を詠むという新しい試み。ぜひ、誌面をご覧ください。

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エディターMORITA

物心がついた時からパンツ派。今、一番興味があるのは、どうやったら居心地のよい部屋で暮らせるのか。美容、アート担当です。