2019.06.17

何歳になっても持ちたいカゴ

その昔、私はジェーン・バーキンになりたかったのです。

すみませんいきなり何言ってんだって話ですよね。20歳そこそこの頃、私はミニシアターと名画座だけを信じ、京都にカフェ巡り旅行に行き、「趣味はレコード屋をまわることかな」という男子のことを好きになる人間でした……だっ……ダッサー!!! 仕方ないんですよ、そんな時代だったから。もちろんファッション・アイコンは60~70年代の女優やアーティスト。ミア・ファローとかジーン・セバーグとかアンナ・カリーナとか。中でも憧れていたのがジェーン・バーキンのスタイルで、当時のどから手が出るほど欲しかったのが「あのカゴ」。どんなシーンでも無造作に荷物を突っ込んで持っていた、円筒形のバスケットです。

今やさまざまなブランドがあのタイプのカゴを出していますが、確か当時日本であのデザインのものはほとんど売っていなかった記憶が。悔しい思いを抱えつつ、時は流れ、自分の中には「カゴが好き」という要素だけが残されました。さまざまなカゴを見つけては買ってきたのですが、ちょうど10年前に手に入れたのが、こちらです。

当時、新しく浴衣を誂えたばかりで、「これに合うちょっと大人なカゴが欲しいわ」と探していて見つけました。虎斑竹という模様入りの竹で編まれたカゴです(確か高知のものだったと記憶しています)。編み目も細かく表面も滑らかな手触りでひと目で気に入り、手に入れたもの。しばらくウキウキと使っていたのですが、ある日はっと気づいてしまったのです。「このサイズ感とワンハンドルのデザイン、"あのカゴ"に似ている……!」 大人になって忘れていたと思っていた若き日の好みが、呪いのように自分を支配していたことを。

保存

それから10年、私はこのカゴのことを「和風ジェーン」とこっそり呼んでいます(笑)。こちら、程よく入った虎斑の模様のおかげで和装だけでなく、ワンピースやデニムにも合うんですよ。使い始めて10年ですが、きっとこれからも手に取ると思います。

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エディターOKUDA

ミニマリストに憧れながらも、己の物欲と食欲から逃れられません。好物は生ビールと生牡蠣と生肉、そして大きなイヤリング。