やみつきになる、逆説的なバニラの香り

つかみどころのない人って魅力的ですよね。出会った時に、「この人はこういう人だろう」という風についつい推測してカテゴライズしてしまう良くない癖があるのですが、心地良いのはその仮説を裏切られたとき。ああ、この人にはこういう一面もあるのかぁと、その奥行きにすっかり夢中になってしまいます。
まさにそういう香りに出合いました。バラのノートを専門とするブランド「パルファン・ロジーヌ・パリ」から、「バニラ・パラドックス」という香水です。

バニラの逆説。そう名付けられた通り、驚きに満ちた旋律になっています。甘ったるくて、ぶりっこ。これまでバニラにはそんなイメージを持っていました。けれどこの香水は、その既成概念を優雅に吹き飛ばしてくれます。ひと吹きした時に、「え?」と思わず声がもれました。確かに甘やかなバニラは香るのですが、まるで古い薬品貯蔵庫の扉を開けた時のような、独特な苦味が共存しているのです。ちょうどバニラエッセンスの中に、強い薬草のリキュールを一滴垂らした感じ。それはスパイシーなカルダモンや、ウッディなシダーウッドが配合されているからか、もしくはセンシュアルなアンブロクサン(合成アンバー)がラストに薫るからなのか。わからないけれど、「ごめん、もう一回かいでみていい?」と確かめたくなる。そういう類の香りなのです。もう一度かいでみたところで、簡単にこの香水を定義することはできないのですが。このつかみどころのなさに、すっかりやみつきになってしまいました。中毒性がある、ともいいますね。それでいて底から包み込まれるような落ち着きがあるので、つけていてとても気分が良いのです。ただ香水の悲しいところは、自分が香っていたいのに自分に毎日つけていると鼻が慣れてしまって香りを感じなくなってしまうということ。そのせいか大量に吹きかけている人がたまにいますが、それは迷惑行為なのでご用心。だから今は2週間に1度、と利用に制限をかけています。こう書くと、本当に中毒性の高いパフュームって感じがしますね。

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。

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