「強くなったよね」と言われることが、30過ぎて増えました。ちょっとのことでめそめそ泣いていたあの頃の自分はもういません。生きやすくなったのは事実だけれど、他人からの評価としての「強い性格」というのは手放しで褒められるものではないと思っています。優しさと強さは両立するもの、と信じていますが、しかしこのまま増強されていったら、心がトゲトゲで覆われてしまうのではという不安も。どうにかせねばと思う今日この頃です。
話は変わりまして。先日伊勢丹新宿店を友人とふらふらしているときのことでした。ふと美しいパッケージの香水に目が留まりました。その名も「メゾン ルイ マリー」。1700年代に活躍した「フランス植物学の父」ルイ=マリーの子孫が立ち上げたニッチフレグランスブランドです。ルイ=マリーは、フランス革命からの亡命時、2000種以上の新しい植物を発見し、膨大な標本を後世に残しました。その資料をいかして、子孫である調香師マリー・デュプティ=トゥアールが、透明感と深みをあわせもったパフュームを次々生み出しているのです。
手に取ったのは、「カシス」という香り。トップノートはベルガモット、カシスにブラックペッパー。ミドルに白いバラが香ります。一見かなりキャッチーで可愛らしい旋律ですが、ベースに配されたオークモスやトンカによって、王道から外したひねりが感じられるんです。
この香りを最初に試してみたときの感想は、「あ、可愛い!」。草花や桑の実を摘んで遊んでいた3~4歳のピュアな自分を、引き戻してくれるような感覚なのです。それは、安っぽい感じはまったくしない、芯のあるかわいらしさ。
友人も、「いいにおい!この香りは、あなたの強さを緩和するね」と絶妙な物言いで絶賛。なるほど、性格を香りでやわらげるっていう方法もあるのね……これは買わねば!と購入を即決しました。持ち運びに便利な15mlのパフュームオイルをチョイス。植物標本を思わせる、繊細なデザインのボックスに入ってくるのでギフトにも良さそう。手首や耳の後ろにころころ転がして香らせます。フレグランスで印象をコーディネートするこの技、しばらく当てにしたいところです。
ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。