クリノさんの頭の中

尊敬するスタイリスト、エディターの方々からよくこのように聞いておりました。

「パリコレの会場でクリノさんの隣になると、直前に見たショーの感想だけでなく、いろんな視点でモードの潮流についてのお話をされるので、本当に勉強になる」と。いつかそんな機会が訪れるといいな、クリノさんのお話、私も聞いてみたい！と思っていました。しかし、その機会は新型コロナの感染拡大で遠のく一方、、、。と思っていたら、クリノさんこと、栗野宏文さんの初の著書が出版されているではありませんか！

『モード後の世界　ユナイテッドアローズ創業者のひとり、栗野宏文による社会潮流の読み方』は、5章で構成されていますが、さらに細かくわかれており、ミニコラム集のように、興味のあるトピックからランダムに読んでも楽しめます。特に私がいま関心のあるジャンル、社会問題とファッションについて、サステイナビリティやダイバーシティをファッションの観点でどう捉えるべきなのかなど、わかりやすい言葉で語りかけてくださいます。読み進めると、答え合わせをしているような気分にもなります。

それだけでなく、パーソナルな経歴がファッション史としても勉強になり、知的好奇心を掻き立てられます。人の話を聞いているだけなのに、自分がそれまでより少し成長したような感覚になることがたまにあるのですが、この本はそれと同じ読後感！

いつの日かクリノさんの隣に座って、お話を聞ける機会を夢見て、いまは1ページ1ページ噛みしめながら読み進めています。