皆さんは、自分が大人になったな、という瞬間を覚えていますでしょうか? 私がぼんやりと覚えているのは、とあるアミューズメントパークに行ったときのこと。キャラクターと一緒に写真を撮るというアトラクションに友人と一緒に並んでいたのですが、いざ自分たちの番が来た瞬間、キャストのお姉さんが「さあ、皆さん順番にキャラクターとお友達になりましょう」と言ったんです。私は心のなかで冷静に思いました。「いやいやいや、写真を撮ったぐらいでは友達にはなれないだろう」と。そして、そのお姉さんの言葉に友人たちがまったく違和感を感じていない様子だったことにもショックを受けました。これが私自身の数ある、大人になったなぁ~と思った時だったのですが、このようなちょっと心の底がもぞもぞっとするような瞬間を綴ったエッセイを最近読んだのでご紹介します。
お笑いコンビ「たんぽぽ」のボケ担当である川村エミコさんが初めて書いたエッセイ『わたしもかわいく生まれたかったな』(集英社/1,200円)。この本には、たくさんの「大人に目覚めた瞬間」が描かれています。はじめは3歳から現在に至るまで、現実と自分のなかにあるかすかな溝を丁寧に、そしてくすっと笑える文章で綴られたもので、誰しもが「あぁ~、私にもこんな経験あったな」と思わせてくれる説得力に満ちています。そして、中学時代美術部だったという川村さんが描く挿絵もなんとも言えずかわいいんです。
新型コロナウイルス感染症の拡大もあって、家で自分と向き合う時間が増えたのですが、そんな時にこの素朴な言葉で書かれたエッセイを読むと、「そうだよね、そんなこともあるよね。でも明日もがんばろう」と素直に思うことができます。ちょっと自分に自信がなくなったとき、自己嫌悪を感じたときの処方箋としておすすめの1冊です。
物心がついた時からパンツ派。今、一番興味があるのは、どうやったら居心地のよい部屋で暮らせるのか。美容、アート担当です。