遠くの異国へ行けない昨今、気軽に脳内トリップを楽しめるものとして、最近詩集をよく手に取っています。短い言葉から知らない風景や見たことのないシーンが立ち上がってくることが面白くて。最近は部屋のいたる所に本を置いておいて、疲れたらパラパラとめくって束の間のトリップを楽しむことに夢中です。
お気に入りのうちの一冊は、三角みず紀さんの2016年に出版された『よいひかり』。仕事でお世話になっている方からきっと好きだと思うからぜひ読んでみて、とおすすめされた作品です。1ヶ月滞在したベルリンでの生活が描かれていて、その異国での日常が柔らかな言葉で綴られています。マーケット、テーゲル湖、など固有名詞が挟み込まれていることで、自分もそこに飛び込んだストレンジャーとして記憶を追体験しているような気分に。たとえばですが、今井麗さんの絵がお好きな方は、きっと好きだろうなと思ったりします(私はおふたりとも大好き)。
もう一冊は風景、というよりは別の人格に乗り移ったような感覚になる、木下龍也さんと岡野大嗣さんの共著、『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』。こちらの詩集の主人公は、男子高校生ふたり。夏のとある7日間が、みずみずしい言葉で語られています。彼らが過ごす日々のディテールを切り取る視点はなんとなく「青春」とくくれそうだけれど、でもそんな大きな言葉じゃ十分じゃないような、そこにしかない刹那を感じます。SNSでも話題になった本作ですが、読み返すたびに発見があって私が彼らだったらどう世界が見えていただろうか、とつい思ってしまう。
どちらもきちんとページに沿って通読する、というよりは気軽に好きなページからついばむ読み方で楽しんでいます。また改めて順番を変えて読み返すと違う発見もあるような。忙しい日々のいいエスケープになっています。
好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。