ほとんど外出しないので、撮影日というのは貴重な「人に会える日」。そこでお洒落な撮影クルーの着こなしを眺めるのが楽しみの一つです。12月の前半、尊敬するエディターの謝花佳衣子さんと一緒の現場があったのですが、彼女の全身黒でまとめたスタイルの中でも、ひときわ輝いていたのが足元でした。シックな中にも遊び心があって、ロゴプレートがさりげなく光っている。「そのローファー、すごく素敵ですね!」と伝えると、「これ、めちゃくちゃ履きやすいんですよ!秋に出たんだけど欲しいと思った時にはどこにもなくて。探して探して、ようやく見つけた1足なんです」と謝花さん。どうやら人気すぎて、店頭に並ぶ瞬間に爆速で消えてしまうとのこと。そっか〜今度探しに行こうかなと思ったものの、年末進行に忙殺されて記憶の彼方に消え去っていました。
そうして2021年を迎え、1月も気づけば後半。ある日Twitterを見ていたら、British Vogue誌の記事が目に飛び込んできたのです。例のローファーが大層人気で、それはもはや「カルト的」ですらあると書かれています。日頃セレブスナップには疎く、流行っていると言われると急に欲しくなくなる性分。それなのに記事を読み終えた頃にはそのローファーのことしか考えられなくなっていました!もちろんネット上の正規取扱店は全て売り切れ。「待てよ、謝花さんが1月後半に再入荷すると言っていたっけ」。そんなことを思いながら眠りにつきました。
次の日、久しぶりに会社に出勤。PCに向き合っていても、やっぱりあの靴が頭から離れない。もうこれは、さっさと仕事を片付けてとりあえず見に行くしかない!なかったら諦めもつくし。ということで退勤後プラダ青山店へ向かいました。
「すみません、ラバーソールのローファーはありますか?」と店員さんに声をかけ、2階に案内いただくと、1足だけディスプレイされているのを発見!ただしサイズは38でした。自分のサイズ、37.5は全国を調べてもほとんど取り置き状態で、この店舗にあるもう1足は37。それに関しても取り置きになっています。仕方なく38を試着してみたところ、やっぱり大きい。縁がなかったってことか、と帰ろうとしていたところ、「10分だけお待ちください、今一度調べてきます」とお姉さん。しばらくして「ちょうど、37の在庫をお取り置きしていたお客様がキャンセルされたところでした!」とのこと。あまりにドラマチックな展開に、本当ですか?と一瞬思ったけれど、そんな疑念はお姉さんの瞳の煌めきを見て吹っ飛びました。そして37を履いてみたところ、不思議とぴったりだったのです。そのあとはもう、天にも昇る気持ちでお会計を済ませました。「データを調べたらこのローファーだけ大変なことになってました!人気なんですね」とのこと。素敵なパールが耳たぶに光るお姉様、丁寧な接客をありがとうございました。
ここでようやく靴の素晴らしさを。アッパーの革の上品な光沢感と、武骨なラバーソールの絶妙な対比。重量感ある見た目なのに、トゥが広すぎないことと、インサイドのラバーソールがグッと中に隠れることで、華奢な印象にも見えるんです。本来両立し得ない、「安定感があるのに華奢」を実現しています。白いソックスとチェックスカートを合わせてプレッピーに、デニムから赤い靴下をちらりと見せたり、と初めておろす日に向けて部屋で妄想中。どんなスタイリングもグッと引き締めてくれそうです。
ほどよいソールの高さで身長底上げも叶います。やっぱりいい靴に足を入れると爪先から頭までシャキんとリフレッシュされる。何より満足するお買い物は、日常に言いしれない高揚感をもたらしてくれます。
少なくともまだ何足かは全国にあるそうなので、もし出合ってサイズがぴったりだったら、それはきっと運命です。
ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。