ことのはじまりは、昨年の秋でした。現場でご一緒したスタリストさんが、パリでのストリートスナップを見せてくださったんです。写っていたのは、トレンチコートにくるぶし丈のパンツ、そこに厚手の白ソックスとビルケンシュトック風のサンダルを履いた小粋な女性。「このバランスが気になるんだよね。見てると、ビルケンが欲しくなる」と。見せていただくと、確かにそんな着こなしが散見されました。決して着飾っているわけではないのに、思わずバランスの方程式を解読したくなるような、小洒落たスタイル。「素敵です!!!」と、私もひとしきり盛り上がりました。
そして、先日。ディオールのメンズコレクションを見ていたところ、スナップで見たあの足元が、確かにそこにありました。くるぶしを絞ったクリーンな印象のスウェット風パンツに、厚手のソックス、そしてビルケンシュトックのサンダル!この度、ディオールと初のコラボレーションを果たし、アイコニックなサンダルを2パターン発売するようです。となると、どうしても今、ビルケンが欲しい! 一人盛り上がり、後日店舗へ駆け込みました。
購入したのは、ブランドを象徴するアイテムの一つ、ボストンです。一見、オーバーサイズでズボッと履くラフなサンダルにも見えますが、店員さんが足の形状・サイズを正確に測り、個々の足にぴったり合った一点を提案してくださいます。クッション性のあるフットベッドとスウェード素材は、履いていくうちにより自分の足形に馴染んでくるそう。
私、スウェードレザーのシューズを購入するのは今回が初めてなのですが、やはり皮革×靴ということもあり、劣化すると数年で寿命がくるのだろうか…と漠然と思っていました。しかし、聞いてみると、お手入れ次第で10年以上履かれる方もいますよ、とのこと。長くお付き合いするために、今回一緒にこちらの2点も購入しました。一つは、皮革に栄養を与え、防水加工を施すスプレー。スウェードは乾燥が大敵のため、こちらを月1回のペースでふきかけて潤いを補給してあげると良いそう。人間で言う、化粧水の役割だそうです。そして、靴用のクリーニングブラシ。ゴム部分で汚れを落とし、はけの部分で毛並みを揃えることで、美しさをキープします。
ディオールのコレクションのように、気分は実用的な要素をきれい目なイメージで着たい。例えばジャケットスタイルと合わせたり、センタープレスの施された美しいパンツと合わせたり。まだまだ模索中ではありますが、妄想が膨らみます。
先日、会議で「最近クラークスのワラビーをよく見る」と編集部員がぽろりと言っているのを聞き、私も大きく頷いていたのですが、長年愛されてきた名作シューズを今改めて見直し、スタイリングに取り入れる気風を感じます。それは、コロナ禍で芽生えた“良いものを長く”的な精神とも結びつきそうですし、古着など、時間を経てきたアイテムから最新トレンドへの逆輸入的なムードともリンクしそう。新しいものを柔軟に取り入れつつ、長い目で見た正統派スタンダードアイテムもさらりと履きこなす。来たる春、そんな着こなしがしたい、と思う今日この頃です。
周囲の人の着こなしが気になって仕方ない私服ウォッチャー。
街でも目を光らせています。ミニマルで、少しひねりのある服が好きです。