アートを買いました。Mai Akashiさんの抽象画については、その淡い色彩の重なりをひと目見て心奪われました。誰しも自分の中に大切にしまっている風景ってあると思うんです。それは子供時代に初めて春の芽吹きを認識した瞬間だったり、夏にプールの水面に光が反射していた時のことだったり、秋に落ち葉を踏みしめた時の胸の高鳴りだったり。そういう幼少期から積み重ねてきた記憶が、抽象化してこの絵に立ち現れている気がして。自分とは異なる、会ったこともない方が描いた絵なのに、この不思議な気持ちはなんだろう。これが人間の共通意識とか、原体験というものなのかしら、なんて思っていました。
それ以来ずっとMaiさんの作品をウォッチしていたのですが、最近は立体作品の制作を始められたようです。SPURでもご紹介しました。このアートピースを見た時、なんとも言えないおだやかな気持ちに包まれて、「これを手元に置いておきたい」と強く思い、購入するに至ったのです。
まるで人と人が寄り添って抱き合うように、守り合っているかのように感じられるオブジェ。ふんわりやわらかそうな見た目だけど、セラミックのするり、ひんやりとした質感も心地よく、安心を与えてくれます。
デジタル上で当たり前にアートやファッションを売買する世界がやってきています。そんな時、「現実社会でアートを買う」というのはどういうことなんだろうと考えます。私にとってそれは、心の中の言葉にならない景色と、現実の自分を繋ぎ止めてくれるような、そんな行為なのかもしれないと思いました。自分がぐらぐらと揺らいだ時に、夢想しながらも、「今ここ」に足をしっかりつけて立っていられるような。
いつかMaiさんが描いた抽象画も手に入れたいと思うものの、今はまだその時ではない気がして、その機を待っているところです。
ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。