幼少期、(夏祭りの景品なのか雑誌の付録なのかもはや覚えていない)キラキラのコンパクトミラーをのぞき込んでは、お姫様のような気分になっていたことを覚えています。今となっては、ファッションや持ち物がもたらすトキメキの魔法を教えてくれた大切な思い出です。
そんな記憶から数十年、最近はお恥ずかしながら手鏡を持つ習慣はすっかりなくなっていました。顔を確認したいときに見つめるのは、スマホケースにうつるぼんやりとした自分か、スマホの内カメラにうつした姿。そんな生活に慣れきっていましたが、先日、久しぶりに心沸き立つ出合いがありました。
それは、ずばりtanakadaisukeのコンパクトミラー。デザイナーのタナカさんのインスタグラムは以前からフォローしており、丁寧な手仕事に長らく憧憬の眼差しを向けていました。そして、先日遂に展示会で実物を見られる機会が到来。ワクワクしながら会場に向かうと、ラックにかかるお洋服からテーブルに並ぶ小物類まで、どれも大変に精巧なあしらいが施されています。それは、まるで一点一点が芸術作品のよう。衣服の大量生産が叫ばれて久しいですが、眺めているだけで、いかにデザイナーのタナカさんが衣服を大切に捉えているのかが伝わってきます。存在で語るとは、まさにこのこと。
「何か必ず手に入れたい...!」と思い会場を回っていたときに目に飛び込んできたのが、この手鏡でした。煌びやかに光るのは、細やかに縫い付けられたビジューの刺繍。お話を伺ったところ、一点一点全てハンドクラフトで作成しているとのことでした。(その繊細さたるや...!)もしも私の祖母のドレッサーにこんなミラーが隠れていたら、宝物を探し当てたようなスペシャルな気持ちになるでしょうし、遠い未来にヴィンテージ店で見つけたとしても、”素敵!”と心躍るのではないでしょうか。小さなコンパクトに詰め込まれたロマンに、思わず想像も膨らみます。
ちなみに展示会では、東京コレクション時にtanakadaisukeさんのショーを歩かれたモデルさんも、多数いらっしゃっていました。ショーで着た服以外にも袖を通したい...!と足を運び、数人でわちゃわちゃとセットアップやドレスを試着する姿は、さながらプリンセスのよう。1ピース1ピース端正に縫われた夢のある衣服に身を包んだら、大人でも、まるで姫気分の特別な魔法にかかるのかもしれません。
ちなみに、数種類あるミラーデザインから私が選んだのは、三頭蛇のもの。「蛇は縁起物!」と祖父母に刷り込まれたことを購入時に思い出しました(笑)。こちらのミラーは受注生産となっており現在はSOLD OUTになっているのですが、また再開してくださることを願って、他の種類も夜な夜な画面越しに眺めています...。
周囲の人の着こなしが気になって仕方ない私服ウォッチャー。
街でも目を光らせています。ミニマルで、少しひねりのある服が好きです。