する事なす事上手くいかず、悔しさと悲しさでしんみりとしてしまう夜、ありませんか。昨年末の私は、まさにそんな状態でした。何かする度に空回りや失敗ばかり。”負のスパイラル”です。一旦状況を整理して落ち着かなければ、と思うのですが、積み重なる仕事は待ってはくれません。へばりつくように毎日を必死に過ごしていた、とある夜。薄ぼんやりと深夜に開いたYouTubeでオススメに出てきたのは、CHANEL N°5のショートムービーでした。
テレビCMでもよく見かけるそれは、黄金に光る煌びやかな月面上で、女優マリオン・コティヤールが男性と戯れるようにダンスを踊る短編フィルムです。彼女が橋の上から月を見上げると、次の瞬間にはゴールドレースで仕立てられたなんとも美しいロングドレスをまとって月面に着陸。何にも縛られずに自由に舞い踊る二人だけの世界は、ため息が出るほど美しい……。現実世界の自分がどんなに悲惨でも、それらが入り込めないくらい耽美な世界がこの世に存在していて、束の間そこに逃げ込めるという事実に救われました。
その時ふと思い出したのは、以前読んだある本の一節。そこには、「写真の中の女性を見つめると、たちまち、その中にいるのは自分なのかもしれないと思いはじめる。人は衣服という記号を通して、実際には住んでいない世界の中へ、自分自身を投影することができる」というようなことが書かれていました。先行きの見えない不安定な時こそ、ファッションが紡ぎ出す夢の中に自分をひととき投影してみる。それって、実は心によく効く薬なのではないかと思いました。
次の日、「今日は必ずこれを」と手に取ったのは、言わずもがなCHANELのN°5。シュッとひとふきすると、昨夜の至福の時間に舞い戻ったように錯覚します。映像の中の、自立した気品のある女性像には程遠いため、つけると少しソワソワしてしまう香り。でも、いつかこの香りが似合う女性になりたいな、と、これまた夢見ながら今日を生きる活力をくれる香りです。一本のボトルが見せてくれる"夢”に時々逃げ込みながら、本日も業務に励みたいと思います!
周囲の人の着こなしが気になって仕方ない私服ウォッチャー。
街でも目を光らせています。ミニマルで、少しひねりのある服が好きです。