ジョナサン・アンダーソンがクリエイティブ ディレクターを務めるロエベのショーを見るのが、コレクションシーズンの楽しみの一つです。一見シンプルなワンピースも、シルエットが極端なまでにデフォルメされていたり、普通は衣服に用いないような素材を大胆に用いていたりと、いつもどこかにはっと意表を突く要素がある。そんなモダンとユーモアのバランスに、毎シーズン感動するんです。
そしてなんといっても、「これは一体どういうことなの!?」と脳が驚いてしまうようなデザインに、知的好奇心を刺激されます。最近だと、服から植物が生えたようなルックがSNSでも話題となっていましたが、パッと見ただけでは理解できない衝撃が、怠けがちな思考に渇を入れてくれる気がします。
そんな大好きなジョナサンが手掛けるアイテムを、昨年購入してしまいました!(興奮)
手に入れたのは、2022年秋冬のメンズコレクションのバッグ。このシーズン、はじめて見たときにはその難解さに困惑した記憶があります。トップスとパンツが不自然なほどねじれたものや、身体の一部を意図的に見せたルックなど、一般的な“服”の在り方にクエスチョンマークを投げかけるようなランウェイでした。「今日のリアルとは?」という言葉が添えられたこのショーは、デジタル時代となった現代社会において、私たちが見ているものの不確かさをユーモラスに表現しています。
このバッグ、注目すべきはシルバーの装飾。シンクホールを連想させるモチーフに、目が離せなくなりました。ジョナサン曰く、これは“無の空間を表”しているのだそう。“無”の中に荷物を入れ込んで持ち運んでいると考えると、少し可笑しくなってきます。
また、ジョナサンらしい遊びもロエベのクラフツマンシップによって品格を備えているのが、流石だなと思います。どんなスタイルに合わせても浮いてしまうことはなく、使っていると、むしろ程よいフックになって着こなしが格上げされる感覚があります。
さらに特筆すべきは、細部へのこだわり。例えばこちらのシンクホール、付属でついてくるチャームで蓋をすることができるんです。実際にはめてみると、すぽっとぴったりはまるのが気持ち良い。また、内側にロゴが刻印されていたりと、どこまでも細かな芸が光ります。
ただ突飛なモチーフを用いるのではなく、意図的にイメージを選定して見る者に”問い”を投げかけるようなジョナサンのデザインは、見ていてアートのようだなと思います。そんな彼の創造力が、ロエベの持つ職人技やヘリテージと組み合わさってどんなファッションを見せてくれるのか。これからも、楽しみでなりません!