ヨーロッパで人気の「キロセール」……って何? 教会で月に1回くらいのペースで行われるキロセール 皆さん、キロセールという言葉を聞いたことはありますか?ヨーロッパでは一般的なのですが、要は古着市です。でもただの古着市ではなく、1キロ10ポンドから20ポンド(現在のレートで約2000円から4000円くらい)で古着を量り売りするマーケットのこと。このキロセールを開催する団体がイギリス国内でいくつかあり、各団体が各都市をツアーのように巡回していくというシステム。だいたい1か月に1回くらいはどこかしらのキロセールが自分の都市にやって来ることになります。会場は主に教会やオープンマーケットなど。この写真のように、服がぎゅうぎゅうに掛かったラックがずらりと並びます。会場に入るために1ポンド(現在のレートで195円)を払い、透明のゴミ袋を渡されます。そこに気に入った服を詰めていき、レジで重さを量ってお会計、という流れです。 服って世界にあふれているんだ…… 床の上に山積みになった「捨てられた」服たち いちばん最初にこのヴィンテージ・キロセールに行ったときの写真がこちら。この日は教会で行われました。床の上に山積みされた大量の服を見たとき……。正直ショックでした、あまりの量に。大学の授業で教授から、「今地球上にすでにある服で、将来の6世代、7世代先の分までまかなえる」という話をされたことが目の前でリアルに証明されている。世の中に服はあふれているんだという事実を直視させられました。そしてその服はどれもこれも、まだ全然着られるんです。ただ飽きられて回収された服たちが、ピックアップされるのを待っています。でもまずはポジティブな話をしましょう。この大量の服の山からお宝を探し出す喜びといったら、言葉になりません。3分の1くらいはファストファッションで量産された服が占めていますが、なかには貴重な1960年代くらいのドレスや手作りされたパンツなど珍しいものも。この写真の手前にうつっている赤いキルトジャケットも手縫いされたユニークなつくりでした。 お宝探し、楽しい! カレント・エリオットのざっくりニットを試着 たとえばこちらのニットは、カレント・エリオットのもの。会場には試着室がなかったので、このように着た状態を友達と撮りあって判断。「これ、あなたに似合いそう」「こっちはあなたっぽいよね」という会話をしながらショッピングするのは高揚感があり、私はいつも一人ではなく友人と訪れていました。ちょっとしたエンターテイメントですよね。ブティックでお買い物するより緊張感がなくて、リラックスして選べるのです。キロセールにはたくさんの若者が訪れます。安価な服を求めてまずファスト・ファッションに向かうのではなくキロセールに足を運ぶというカルチャーが、若者たちには浸透しているのです。服の循環をこうして自然に生活に取り入れているのは素敵なこと。日本でも導入していきたいシステムです。もちろん賛否両論あります。たとえばあるキロセールにて、3人の小学生くらいの男子たちが背後で何やら話しているのに耳を傾けると、「これどう思う?」「いいと思うけどちょっと時代遅れっぽい」「でもこれ、●●●●●●●(某キャラクター)もののスウェットだから高く売れるかも」「あとでebayで売ろう」といった会話を交わしていたんです。今やこんな子供までもがリセールでおこづかいを稼いでいるのかと驚愕した瞬間でした。このリセールマーケットが逆に服の買い捨てサイクルの高速化を促進しているという声もありますし、回収された古着の仕分けの現場にて、縫製工場で長年問題視されているような搾取(長時間労働・低賃金)が新たに生まれているという報告もあります。しかし全体的に見れば、作って売って買って捨てるという直線型のシステムを、作って売って買ってまた次の人に渡して、時にはまた作り直して売るという循環型に構造改革していくための一つの選択肢として、このキロセールがヨーロッパでうまく機能しているのは間違いないのです。 服を買う際の選択肢のひとつとして 当日ゲットしたお宝 これが当日ゲットしたアイテム一覧です。うれしくて帰宅後ベッドの上に広げて撮影しました。左上のツイードジャケットはなんとモスキーノ・チープアンドシックの1990年のコレクションでした。肩にパッドが入っていて今のパワーショルダームードにもしっくりはまります。右上のフライトジャケットは1920年代のヴィンテージ!です。下段中央のキルティングスカートはハート柄でスリット部分にリボンが。もしかしてお母さんが娘のために作ったのかな?というクラフト感にきゅんとします。これら全部で30ポンド!当時は4500円くらいでしたが現在の恐るべき円安レートでは5800円ですね……。新品を買う喜びはもちろん何にも代えがたくはありますが、服を買う際の選択肢のひとつとして、キロセールというシステムが日本にも導入され、浸透していくことを個人的に願っています。 ファッション特集 愛するからこそ循環させる 「よみがえれ! 古着再生大作戦」 - ファッション特集 | SPUR ファッショントピックス 新作 × 古着の化学反応で、リバース・ヴィンテージ。時をかけるモード - ファッショントピックス | SPUR ファッショントピックス 【東京ヴィンテージショップガイド】個性派ショップの魅力をたっぷり紹介! - ファッショントピックス | SPUR