「ソウルでおすすめの展覧会ある?」、渡韓の機会が多く、アートガイド企画も担当していたことから友人によく聞かれる質問です。個性あふれる美術館やギャラリーが多く点在するためあれもこれも薦めたい……といつも迷うのですがこの夏は“まずはこの2つ!”と挙げる展覧会が。その1つがGROUNDSEESAW西村で開催中の『HIPGNOSIS展』です。
伝説のデザインスタジオの足跡を辿る展覧会
展覧会の正式名称は「HIPGNOSIS LONG PLAYING STORY」。1960年代に発足後、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、ポール・マッカートニーら名だたるアーティストのアートワークを担当。アルバムジャケットに芸術性を持たせた先駆者と知られる、伝説のデザインスタジオに焦点を当てた展覧会です。
“ちょっと世代が違うな”と思われた方もお待ちを!彼らはPhotoshopがない時代に独創的なアートワークを生み出したことで知られ、実はAdobeは彼らの手法を参考にしたと語られることも。音楽ファンはもちろん、アートやデザイン好きな方も楽しむことのできる内容となっています。
映える、だけどそれだけじゃない
近年、数多くのミュージアムやギャラリーがオープンしているソウル。中には集客のための“映える仕掛け”に走りすぎていて、肝心の展示の見応えはイマイチだったな……ということも時折あったりして……。でもこの展覧会は「足を踏み入れた瞬間に心踊るフォトジェニックな仕掛け」と「じっくり噛み締めたくなる展示内容」を見事に両立。これがおすすめしたい理由のひとつです。
彼らの貴重なインタビュー映像から始まる展示は、その後アーティストごとのブースに分かれて展開され、ビビットな色彩と自由な発想に富んだディスプレイに足を踏み入れるだけでワクワクするんです。展示内容に興味がなくても、空間を眺めるだけで楽しいのでは!
フォトジェニックな空間もさることながら、創意工夫に富んだ展示も見応えがあります。QRを読み込むことで関連のプレイリストを聞くことができたり、受話器を取ると音楽が流れたり。読みやすく掲示されているHIPGNOSISのメンバーや関係者の言葉も心に残ります。(英語と韓国語のみですが、翻訳アプリなどを使えば理解しやすい文章です)
円形の建築であるGROUNDSEESAW西村を回遊する展覧会は、随所にキュレーターやデザイナーの熱量を感じる内容。押し付けがましくなく「これも見てみてよ!」と語りかけてくるようで、HIPGNOSISへのリスペクトと愛情に満ちています。そして敷居が高い感じがなく、「どんな人でも楽しむことができるように」というサービス精神にあふれる姿勢が、何より素敵だなと思いました。私自身、HIPGNOSISのことはあまり詳しくなかったのですが時間を忘れて楽しむことができました。
ミュージアムショップも大充実!
主催者の熱量は冷めることなく、オリジナルグッズが詰まったミュージアムショップへと続きます。伝説のアートワークがプリントされたマグネット、ポーチ、キーホルダー、ポスターとバリエーションの豊富さに驚くはず! あれこれ悩んでTシャツ2枚とマグネットを購入しました。図録も気になりましたが重量感が気になって断念……。
GROUNDSEESAW西村のある三清洞&北部エリアは美術館やギャラリーが充実しているので(よろしければこの記事も参考に)アートスポット巡りはもちろん、景福宮を挟んだ反対側にはSHOP AMOMENTやTOUT Y ESTなど日本でも人気のブランドのお店もあるのでショッピングも叶います。8月3日までにソウル旅行の予定がある方は足を運んでみてください。
ちなみにこの夏おすすめのもう一つの展示はLEEUMで開催中のフィリップ・パレーノの大規模展。こちらは日本のメディアでもいくつかレポートされているので、そちらもぜひチェックを! まもなくポーラ美術館で開催される展示と見比べるのも楽しそうです。
ワードローブの中心はデニムとメンズのシャツ。『スターウォーズ』シリーズに出てくるイウォークに似た犬と暮らしています。