この香りどこの? と聞かれたのは【ミラーハリス】の香水

「これどこの香水?」と聞かれたのは……

ミラーハリス セラドン

たまに、「これを付けていたら見知らぬ人から、どこの香水なのか聞かれた」という話を耳にします。ですが、感嘆半分、「そんなことあるのか? その方が元々いい匂いなのでは」など内心半信半疑でした。まさか自分にそんなことが起こるなんて夢にも思わず。異世界の住民の話かと思っていました。
しかし、なんとも不思議で嬉しいことに現実となったのです……!  会社の近くのコンビニのレジで、それはそれはフレンドリーで気さくな店員さんがいらっしゃるのですが、商品をレジにおくなり「とっても良い香りですね〜!」と。思わず、なんか私美味しそうなもの買ったっけと手元を見たのですが、いつも通りのサラダとヨーグルト。「どこの香水?」と聞かれて、我に返りました。(ちなみに、私は毎日香水をつけてそのコンビニによく行くので、頻繁に彼女と顔を合わせているのですが、それまでそんなことはありませんでした……笑)

ミラーハリスの「セラドン」

ミラーハリス セラドン

素敵な出合いを運んできてくれたのは、ミラーハリスの「セラドン」(¥33,990)。私自身、"ひと嗅ぎ惚れ"してしまったフレグランスです。
香りのシャワーがふりかかった瞬間きらめくのは、爽やかなグリーンノート。まるで雨露に濡れた庭園の緑ように、たっぷり水をふくんだみずみずしさが弾けます。そのあとに時間をかけて現れてくるのは、少しスモーキーなウッドやセイロンティー。青々としたトマトリーフも、個性的なアクセントを加えます。そして全体を、チュベローズやマグノリアなどのホワイトフラワーがやさしくまとめ上げ、どこまでもピュア、そして儚げな余韻を残すのです。
柔らかだけれど凛とした香り立ち。たおやかさに満ちていながら、モダンで唯一無二の表情が顔を出す。そのバランスがたまらなく大好きな香りです。まさに、セラドン=青磁、の名がふさわしい。

とある小説の1ページを、香りで描いたフレグランス

ミラーハリス セラドン
ラベルには物語の刻印が……!

実はこの香水、小説の一節をもとにその世界を香りで語る「ストーリーズ コレクション」の一作であり、中国の古典「紅楼夢」のワンシーンを描いているのです。調香師はあらかじめ、小説の1ページだけを渡され、それを元にイメージを膨らませたのだそう。

「日が傾き、草が冷たく青白くなり、両開きの扉を閉じる。にわか雨の後、青い苔が鉢を覆い尽くす。それは翡翠のごとく麗しいが、汝の無垢さにはかなわない。白雪のように汚れのない汝の姿に、我は感動し、言葉を失う。汝のすらりとした、匂い立つような姿は、繊細で気品にあふれている。月が第三の刻に達すると、汝の美しい影が姿を見せ始める。無垢な妖精のように羽を羽ばたかせ、飛んでいくなど、決して言わないでおくれ」。ー『紅楼夢』より

この一節を読んで香りに立ち返ってみると、水墨画に描かれるような、中国の幽玄な世界が目の前に広がるよう。はたまた、宮殿の庭に佇む一輪の花のような、繊細な美しさを感じてみたり。情景を想像してみるのも、楽しみの一つです。

この香りを気に入ってくれた彼女には、ここまでの深いストーリーを伝えることはできなかったけれど。いつかお話ししてみたいな、と思いました。
ちなみに余談。私は普段、誰かのために……というよりかは、自分にしっくりくるフレグランスをまといたい、と思っていますが、こうやってカジュアルに、お互いの香りを「いいね!」って言い合えることはなんて素敵なことなんだろうと改めて感じます。香水ってパーソナルな部分を映すからこそ、深い話に繋がっていく側面もありますよね。
日本はかつては「香水砂漠」なんて言われていたそうですが、フレグランスがどんどん浸透して、街中に個性溢れる香りが溢れて、みんなが素敵だねと言い合うような……そんな世界を想像したら、思わず胸がときめいてしまいました。

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エディターMICHISHITA

シンプルだけれど一癖ある服を求めて三千里。日々、モードを追いかけています。淡水パールと洋梨が好き。

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