心身を治癒してくれたのは【ハン・ガンの新刊『光と糸』】でした

ノーベル文学賞受賞後初の作品『光と糸』

ハン・ガンのノーベル文学賞受賞後初の作品『光と糸』の写真

河出書房新社/2,200円

正月三が日、いかがお過ごしでしょうか?
年末年始は毎年1年の疲れを取ることに必死で、昼まで寝ていたり、新しいマッサージ器具を試したり、大掃除して気分をすっきりさせたり。日頃疎かになっている”自分自身と向き合うこと”を意識しています。

特に昨年は、長年の夢が叶ったこともあれば、思いもよらない苦境に立たされて辛い時期もあり、ジェットコースターのような日々でした。年末は、自分の何がダメだったんだろう……?とネガティブ思考に呑み込まれてしまって、何とかリカバリーしなければといつも以上に試行錯誤。

その中で最も私の心を治癒してくれたのは、ハン・ガンの新刊『光と糸』でした。

2024年にアジア人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したハン・ガン。光州事件を題材にした小説『少年が来る』を読み進める余裕が自分にはなく、途中でストップしたままの作家でした。受賞時のブームに乗って再開できたらよかったのですが、受け止める気力がまったく湧きあがらず……。ところが、冬休み前に手に取った『光と糸』のページをめくると、するすると文字が体の中に浸透していったんです。

「最初から最後まで光のある本にしたかった」ーハン・ガン

ハン・ガンのノーベル文学賞受賞後初の作品『光と糸』の写真

この本は、ノーベル文学賞受賞記念講演の全文(本当に素晴らしいです)、創作にまつわるエッセイ、5編の詩、庭の植物の観察日記、ハン・ガン自身による写真を著者自らが編んだ一冊です。

子どもの頃につけた日記帳を見つけ、8歳のときに書いた詩から始まるのですが、愛にまつわる素直な問いと答えが可愛らしくて、雪山の小屋の中でじんわり体を温めてくれる暖炉のように心の芯まで届いてきました。

作品にまつわるエッセイでは、作品を書き上げる中で感じていた苦痛と向き合う過程が記されていて、まるで苦しい気持ちを抱えている自分と並走してくれているかのような錯覚に。「コートと私」という題名の詩は特にお気に入りになりました。ページをめくるごとに心身が軽くなっていくような読書体験は初めてかもしれません。

その理由は、ハン・ガンの思想を存分に引き出す佐々木暁の装幀と組版にもあります。言葉と言葉の余白が作品の余韻になっている。表紙の美しさもそうですが、本という物がもつ力に改めて気づくことができました。これはぜひ手に取って体感していただきたいです。

『すべての、白いものたちの』は旅のおともに

ハン・ガンの著書『すべての、白いものたちの』の写真

河出文庫/935円

心に余裕がなければ読書を楽しめない私でしたが、『光と糸』のおかげで、本をめくりながら読む読書には心に余裕をもたらす力があることを実感しました。年始に予約していた温泉地への旅のおともは、同じく佐々木暁がカバーデザインをしているハン・ガンの『すべての、白いものたちの』の文庫をセレクト。遅ればせながら、2026年は私的ハン・ガン年になりそうです。

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ハン・ガン『光と糸』

商品名

ハン・ガン『光と糸』

ブランド

河出書房新社

価格

¥2,200

ざらざらした紙質も文章とマッチしていて、めくるたびに心が回復していきます。

エディターKINUGASAプロフィール画像
エディターKINUGASA

顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。