電車の旅の楽しみは駅弁です。世にいう電車好きとしての「鉄分」はさほど高くはないのですが、強いていうなら「弁鉄」か。旅行や出張の道中、駅弁を開くと、『孤独のグルメ』の五郎さんが出現します。「うーん、これこれ」「俵型ごはんとごましお、それに梅干し。こうでなくっちゃ」
(ちなみに『孤独のグルメ』原作者の久住昌之さんが兄弟ユニット泉昌之として1983年に発表した短編集『かっこいいスキヤキ』に所収の「夜行」は駅弁マンガの傑作です)
推し弁は「崎陽軒シウマイ弁当」、東京駅なら「チキン弁当」、富山駅の「ます寿司」、和歌山駅の「めはり寿司」もいいんだなあ……なかでも愛してやまない清く正しいスタンダード駅弁がこちら。JR静岡駅の東海軒「幕の内弁当」。
明治22年静岡で創業した老舗の駅弁
俵型ごはんの上にごましおと梅干、色とりどりのおかずがちょっとずつ。そして、駅弁で忘れちゃならない地元の味、わさび漬が入っているのも抜かりない。いまどきの「映え」とは一線を画す、スタンダードかつオーセンティックな、ザ・幕の内弁当。
販売元の東海軒の公式サイトによれば
「明治22年2月1日にこの静岡の地に鉄道が開通されて以来135年、東海軒は鉄道開通の同じ年の明治22年12月1日に「加藤辨當店」として鉄道内の立ち売り業から始まりおかげさまで今に至ります。」
おおすごい。本当に老舗!
懐かしくも本格派なビジュアル、みんなに愛されてます
JR静岡駅に、東海軒の販売スタンドが何軒かあります。新幹線に乗車する前に構内の売店で幕の内弁当を購入するのがお楽しみ。ちなみに売店のお弁当は魅惑のラインナップで、静岡らしく香り高い緑のお茶の葉入りの「茶飯弁当」や、えっ! というくらいパッケージが可愛い「サンドイッチ」も。まさに「こういうのもあるのか!」ゴロー化が止まらない。
先日立ち寄ったところ、キーホルダーとマグネットを発見。グッズ化されているってことは、やっぱりファンが多いんですね。嬉しくなってこちらも購入。
ご覧の通り、「幕の内弁当」のレトロな外箱には鮮やかなイラストが。「駿河凧 今川義元公」「祝い鯛」「静岡姉さま」「静岡張子面」……県外出身者ゆえ疎いのですが、静岡ゆかりの味わい深い民芸品が描かれています。いいじゃないですか。そしてこの端正なおかずたちよ! 皆さんの心のゴローもほくほくするのではないでしょうか。かまぼこ、卵焼き、エビフライの強力ハーモニーに、煮物ときんぴらがベースを響かせ、サバ! チキンカツ! のギターソロ、そしてフィルインする漬物、うぐいす豆、わさび漬け! WASABIZUKE! センキューシズオカ! センキュージャパーン!
短くも楽しい電車旅を、ご当地ビールとともに
興奮してよくわからないことを口走ってしまいましたが、ご容赦を。だってこの幕の内弁当、呑兵衛にとっては「つまみになる弁当」なんですよね……。思わずご機嫌になってしまうのです。飲むならサッポロ静岡工場謹製・静岡麦酒。こちらも爽やかかつコクがあり、うまい! 幕の内弁当も限定ビールも、安心感のあるスタンダードな味と、親しみやすい「ご当地感」で、すっかり静岡が好きになってしまいます。
静岡から東京の旅は、新幹線ではあっという間。ちょっとの道程を盛り上げ、旅気分に浸らせてくれるアイテムに、夢中です。