長澤まさみ
知性の花が開くとき

白いシャツとスカートのミニマルな組み合わせ。だけどシワ加工や、エイジングさせたレザーで立体的に仕立てたシルエットが「着る人の存在感を際立たせて、着るだけで＂決まる＂感じがありますね」と長澤さん。スタッズのようなフォルムのパーツで構成された、モダンなイエローゴールドのネックレスにも、プラダならではの独創的なアティチュードが宿る。

シャツ￥203,500・スカート￥913,000・ネックレス￥1,980,000（すべて予定価格）／プラダ クライアントサービス（プラダ）

俳優としてのキャリアは20年以上。あまたの作品を通して幾度となくその姿を目にしているはずなのに、いまだ見たことのない表情が出てくる。この日、長澤まさみさんが纏ったのは、プラダの2025-’26年秋冬シーズンの服。「RAW GLAMOUR」というテーマのもと、「女性らしさ」について改めて問いかけたコレクションだ。ひと筋縄ではいかないルックを、類いまれなる表現力と唯一無二の存在感で飄々と着こなし、プラダが提示する新たな価値観と相まって新しい「長澤まさみ」が次々に繰り出される。「襟ぐりが開いている服もセクシーすぎなくてエレガントさがある。着ていてたおやかな気分になりました」と、洋服に込められたメッセージを察知する鋭い感性にも驚かされるばかり。長澤さんが考える女性らしさについて聞いてみると「ひと言で語るのは難しいですが、美しいしぐさや佇まいにふっと目を奪われてしまう。その魅力に惹きつけられる＂瞬間＂に、女性らしさを感じている気がします」。

なんとも耳に心地よいやわらかな声にのって、ゆったりとしたテンポで発せられる言葉の一つひとつに知性が宿る。そんな長澤さんの「知」の源となっているものの一つが「民藝」だという。「もともと陶器が好きで集めるようになってから、その流れで民藝を知って。日々の道具の中に美しさを見出す、そして高価であることなどで価値が左右されない。その感覚、理念がいいんですよね。自分で少しずつ収集している陶器も、日常使いの買いやすい価格のものが中心なのです。それらを並べてみると、全然違う場所で見つけたものが集まっているのに、自分の色が反映されているのが面白いんです」

感性を耕すためにはいろんなことを知るのが大事で、それによって想像力はより豊かになり、引き出しが増えて物事の考え方や捉え方が広がってゆく。そういった意味で読書もまた、長澤さんを知の世界へ誘ってくれるものの一つ。「ただ、最近はゆっくり本を読む時間がなくて、作品の準備のために読むことがほとんど。次に控えている作品（10月17日公開の映画『おーい、応為』）は江戸時代の物語なので、その頃の習わしや江戸っ子の心得が書かれたものをいくつか読んだのですが、当時は粋であればどんなふうに着物を着てもよかったそうなんです。それを知って、あまりルールにとらわれずに袖を通していいんだ、と気が楽になって、プライベートでも着物や浴衣を楽しんでいます」。結局、現場に入ったら監督から「長澤さんのままで！」と言われてしまったそうだが「予習していってもそれが採用されるかどうかはわからないですし、現場で生まれるものに対応するための瞬発力を持っていなきゃいけない。ただそれを身につけるためにはやはり、常に準備をしておくことが必要だと考えています」。