COMME des GARÇONS
新しさへの挑戦。時を牽引する
コム デ ギャルソン
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日本発、世界で輝く15のブランドストーリー
COMME des GARÇONS
新しさへの挑戦。時を牽引する
コム デ ギャルソン
時代の動きを見つめながらもトレンドとは一線を画し、常に独自の視点で新しさと強さを求める孤高のブランド、コム デ ギャルソン。その凛然とした姿は後進にも影響を与え続けている。ブランド設立からこれまでの半世紀以上にわたる歴史を振り返るとともに、コム デ ギャルソンに在籍経験もあるライター、栗山愛以が最新コレクションの魅力を綴る。
「想定外」のものづくり
ショーでは、モデルは真っ直ぐ歩いてきてUターンしていくものだと思い込んでいる私たちの意表を突いて、ランウェイの真ん中で怒ったり、途中で引き返そうとしたり、うなだれたり、道を外れようとするモデルの動きにも驚かされた。2014年春夏あたりからショーで披露する体数を20前後に絞り(19年春夏〜20年春夏は30体前後になったが)、「服」と言えるのかどうかもわからないボリュームのある抽象的な塊のようなものを発表することが多くなったのも私たちを動揺させた。コム デ ギャルソンに対峙する時はぼんやりとしてはいられない。システムや服づくりの「当然」を裏切ってくるから、常に緊張感が必要だ。その精神は小物にも行き渡り、たとえばオーソドックスなダービーシューズのソールは溶け出して巨大化している。パワフルなそれらを着こなすには、私たちも真剣勝負で臨まなければならない。
だが、「ほんの少しの明かり」も
ある
「複雑なこと」や「雑念」を一切取り去ったと語っていた2022年春夏で力強い造形と共に少女性が残されていたように、丸襟、フレアスカート、リボン、フリル、ドット、そして花といった要素は、川久保が手がける服の核となっていると思う。しかし今季は、それらが少し違った意味を持つのかもしれない。今年6月に発表された川久保が手がけるメンズウェア、2025年春夏コム デ ギャルソン・オム プリュスのテーマは「THE HOPE OF LIGHT」で、ピンク、フリル、プリーツ、透ける素材といった一般的に甘さを感じさせる要素を「ほんの少しの明かり」として用いていた。コム デ ギャルソンの24-25年秋冬は黒がメインのルックが続いたがラストは白一色のドレスだったし、漆黒のルックにも、よく見ると花やリボン、フリルのようなモチーフが見受けられた。それらには、一縷の「希望」が託されていたのではないだろうか。