A Letter from DIOR
モード史を彩る、
ディオールの美学
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「15年先の未来も一緒に」
A Letter from DIOR
モード史を彩る、
ディオールの美学
SPUR35周年、SPUR.JP15周年のアニバーサリーを記念する連載では、時代を超えて愛され続ける名品と、そこに宿る豊かな物語を紐解いていく。今回はファッション界に革命を起こした伝説のクチュリエ、クリスチャン・ディオールのストーリーとともに、ディオールの名作に宿るモードの美学を感じたい。
永遠のアイコンバッグ
「レディ ディオール」
その優美な名前にふさわしいこのバッグには、数々の物語が秘められている。当初「シュシュ(お気に入り)」という名称で呼ばれていたこのバッグは、1995年に当時のクリエイティブ ディレクターであったジャンフランコ・フェレによって発表された。そして、フランスのシラク元大統領夫人が、イギリスのダイアナ元妃にこのバッグを贈ったことをきっかけに、その日からダイアナ元妃の愛用バッグとなったのだ。メゾンは、このバッグをこよなく愛したダイアナ元妃に敬意を表し「レディ ディオール」と改名。また、バッグのディテールには、ムッシュ ディオールへのオマージュもちりばめられている。象徴的な「カナージュ」のステッチは、ムッシュが発表した初のオートクチュールコレクションの会場に用意された、籐編みの椅子のモチーフから着想。また、“D.I.O.R.”のチャームは、占いを好んだムッシュが肌身離さず持ち歩いたチャームからのインスピレーションだ。それぞれのチャームを繋ぐ金具は、ムッシュとメゾンのラッキーナンバーである「8」のモチーフがデザインされている。ディオールの美学がつまったこのバッグは、永遠のラッキーアイテムとして愛され続ける。
バッグ「レディ ディオール」〈H17×W20×D8cm〉¥860,000・シャツ¥340,000・ショーツ¥175,000・チョーカー¥61,000〈ともに参考価格〉/クリスチャン ディオール(ディオール)
モード界に革命を起こした 「バー」ジャケット
1947年2月、クリスチャン・ディオールのデビューコレクションが発表された。戦後間もないパリで、皆が待ち焦がれた新時代の扉を開けたのが、この「バー」ジャケットだった。V字のラペル、なだらかな肩のライン、絞ったウエスト。ショー会場で、後世に名を残したファッションエディターのカーメル・スノーが「これは素晴らしい革命よ! まさにニュールックだわ!」と叫んだ言葉から「ニュールック」という伝説の言葉が生み出され、ディオールの名は一夜にして世界中に知れ渡ることとなる。また、この「バー」ジャケットが自立した女性のためにデザインされたことも、その名称からもよくわかる。パリのディオール本店の傍にあるホテル「プラザ アテネ」のバーで、女性がひとりでカクテルタイムを楽しむシーンのために提案されたことに由来するからだ。メゾンの原点ともいえるこのジャケットは、歴代のクリエイティブ ディレクターたちによって幾度も再解釈されてきた。現クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリは、発表当時のクチュールのディテールはそのままに、現代女性のライフスタイルに合うウールとシルクツイルのファブリックを使い、どんなシーンにも寄り添う一着を提案している。
ジャケット¥670,000・スコート¥512,000・チョーカー¥61,000/クリスチャン ディオール(ディオール)
「ディオール ブックトート」と
メゾンのヘリテージとの出合い
読書好きのマリア・グラツィア・キウリにより、2018年に発表された「ディオール ブックトート」。書店で使われるトートバッグからインスピレーションを得たこのバッグは、豊富なテキスタイルに加え、自分のイニシャルや名前を刺しゅうで記すことができるパーソナライゼーションも人気の理由のひとつだ。この「ディオール オブリーク」モチーフは、1967年に当時のクリエイティブ ディレクターであったマルク・ボアンによって考案されたもの。マリア・グラツィア・キウリは、2016年の自身のファーストコレクションにこのグラフィカルなモチーフを取り入れ、現代によみがえらせた。新作「ディオール ブックトート」では、ストーンウォッシュ加工が施されたヴィンテージのような風合いの「ディオール オブリーク」モチーフを採用。手作業のスプレー仕上げにより、パターンを強調する陰影が、色調に変化を生み出している。メゾンのヘリテージのひとつであるモチーフと、新たなアイコンバッグとの出合い。過去から引き継がれたクリエイションは、これからもメゾンの創造性とともに進化していく。
バッグ「ディオール ブックトート」〈H27.5・W36・D16.5cm〉¥445,000/クリスチャン ディオール(ディオール)