
Mame Kurogouchi
日本の手仕事を未来へつなぐ。
マメ クロゴウチの15年とこれから
SCROLL
日本発、世界で輝く15のブランドストーリー
Mame Kurogouchi
日本の手仕事を未来へつなぐ。
マメ クロゴウチの15年とこれから
日本で丁寧に作り上げた美しいファブリックと、洗練された曲線のシルエットを代名詞とするマメ クロゴウチ。その15年の歴史を振り返ると共に、賑やかで慌ただしいモード界に身を置きつつも、独自のスタンスを静かに貫くデザイナーの黒河内真衣子にブランドの精神を語ってもらった。

1年をかけて
1つのテーマに取り組む
モードの世界は半年ごとに移り変わっていくもの。しかし、マメ クロゴウチは1年間同じテーマを掲げている。「リサーチしたことを消化するのに本当は10年かけてもいいくらい(笑)。気になったら、一つのことだけをずっと飽きずに深掘りしてしまうタイプなんです。だから今生の別れのように1年を終え、その後も緩やかに接続していくイメージ。もしかしたら、何年も同じテーマが続く、という時期も訪れるかもしれません」。「陶器」にフォーカスしていた2024年に粘土による成形の難しさを経験したことから、2025年は「かたち」に向き合い続けている。『日本のかたち』(1978)という本もきっかけとなり、身の周りのさまざまな「かたち」のリサーチを開始。これまでは色柄まで書き込んだデザイン画を描いていたが、今回はイギリスの陶芸家、ルーシー・リーが手掛けたボタンをはじめ芸術品や工芸品、自然物などをたくさんポラロイド写真に収めては被写体を黒く塗りつぶしていった。そこから「これは何に見えるだろう」と想像を巡らせてパターンを作りあげたという。このドレスはショーでファーストルックを飾ったピース。「ジャージー素材でウェアラブル。身体を通すことではじめてアシンメトリーなフォルムが生まれます」。
滑らかなストレッチ性のあるジャージー素材を使用。立体的なシルエットでさまざまな体型にフィットする。ドレス¥46,200/マメ クロゴウチ オンラインストア(マメ クロゴウチ)

独自のスタンスで
世界に美意識を伝える
2024年春夏以降はパリのマレ地区にある日本食レストラン&茶房、オガタ・パリがショー会場に。コレクションの着想源となった資料を並べて来場者にお茶とお菓子を振る舞い、黒河内さん自身が説明を行うスタイルが恒例となっている。「異なる文化を背景に持つ海外の方たちに、“なぜ自分がこのテーマに心を動かされているのか”といった感性にまつわるストーリーは言葉だけでは伝えきれません。そこでこうしたスタイルが定着したのですが、自分自身の美意識の根源に向き合うきっかけにもなりました」。きっとこのニットドレスの着想源が京提灯の骨組みと木枠の造形であることも人々を驚かせたに違いない。波打つ柄は、木枠に書かれた墨の文字からイメージを膨らませた。オガタ・パリは、通常のショー会場に比べて小規模であることも特徴。「お祭り騒ぎの中、一瞬で過ぎ去ってしまうショーよりも、“自分たちのルーツを感じられる場所で、静かにゆっくり服を見せて濃度を上げたい”という思いから、ショーに携わるスタッフと対話を重ねて今の形になりました。もちろん会社として成長することは必要ですが、たくさんのメディアで報道されるよりも、深く掘り下げて伝えてもらう機会を大切にしたいですし、多くの取引先とつながるよりも長くじっくり付き合ってくれるお店と出合えることの方が、私たちにとっては大きな喜びです」。
京提灯の骨組みを形成するために使用される弓型の木板のシェイプをニットで表現。全面に小花柄と幾何学模様がちりばめられている。ドレス¥114,400/マメ クロゴウチ オンラインストア(マメ クロゴウチ)