A Letter from Saint Laurent
サンローランが挑む
革命のエスプリ
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「15年先の未来も一緒に」
A Letter from Saint Laurent
サンローランが挑む革命のエスプリ
SPUR35周年、SPUR.JP15周年のアニバーサリーを記念する連載では、時代を超えて愛され続ける名品と、そこに宿る豊かな物語を紐解いていく。今回は、サンローランが牽引し続けてきた革新の軌跡を辿る。
革命を起こした
「スモーキングジャケット」
サンローランを象徴するアイテムといえば、真っ先に浮かび上がるのが「スモーキングジャケット」。1966年、ムッシュ イヴ・サンローランが自身のオートクチュールコレクションでイブニングウェアとして発表したジャケットから、歴史は動き出す。当時は、女性がジャケットやパンツなどのユニセックスなファッションをまとうことはタブー視されていた。そんな時代背景において、まさに革新的であり、物議を醸したコレクションだったといえる。そもそも「スモーキングジャケット」とは、男性が煙草を吸う際に臭いが付かないようにシャツの上から羽織ったことに由来するアイテムだ。当初は、見慣れない女性のジャケット姿を嘲笑したり、パンツを穿いた女性がレストランの入店を断られたりしたともいう。それでもムッシュは、中性的なスタイルを毎シーズン発表し続ける。時代は、ウーマンリブ運動が起こり、既成服が普及し始めた変革期だった。彼の提案するスタイルは、フレンチポップのアイコンであったフランソワーズ・アルディやファッショナブルな若者たちの支持を得て、広く浸透していくこととなる。抑圧的なジェンダーステレオタイプから女性を解放した「スモーキングジャケット」。今もなお、当時のテーラリングを活かしながらモダンに再解釈した名作が発表されている。
ジャケット¥484,000・ブラウス¥275,000・パンツ¥225,500/サンローラン クライアントサービス(サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ)
YSLのカサンドラロゴに
秘められた物語
カサンドラロゴのダブクロージャーが特徴的なバッグ「ル・サンカセット」。メゾンを象徴するYSLモノグラムは、1961年、ムッシュが自身の名を冠したブランドを立ちあげるにあたり、敬愛するグラフィックデザインの巨匠、アドルフ・ムーロン・カッサンドルに依頼したことで誕生した。やや長体を帯びたモノグラムは、直線と曲線が支え合うように組み合わされた優雅なデザインが印象的。そんなキュビズムの影響を受けた直線的でミニマルなデザインは、古い慣習を打ち破り新たなファッションを生み出そうとしていたムッシュの感性と重なるかのようだった。フランス語で“午後5時から7時”を意味する名前を持つこのバッグは、仕事終わりの女性が次の予定へと向かう充実した時間を表現している。
バッグ「ル・サンカセット スープル」ラージ〈H31×W30×D13cm〉¥423,500・ブラウス¥264,000、パンツ¥192,500・グローブ¥88,000・カフ¥122,100/サンローラン クライアントサービス(サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ)
シーンレスで活躍する
「サック・ド・ジュール」
「サック・ド・ジュール」という名前は、イヴニングバッグとは対照的にデイウェア用のバッグを意味するフランス語に由来。構築的なスクエアフォルムを特徴とし、2013年の登場以来、さまざまなサイズ、素材、カラーで展開され続けるメゾンのアイコンバッグのひとつだ。そのインスピレーション源は、1966年、ムッシュが世界初の既製服を取り扱うブティックを、パリ セーヌ川の左岸にオープンしたことに遡る。それは、“ラグジュアリーを日常的に楽しんでほしい”というムッシュの願いを投影したブティックだった。そんなメゾンのDNAを受け継ぐかのように、あらゆるシーンに寄り添うバッグとなっている。
バッグ「サック・ド・ジュール」スモール〈H32×W25×D16.5cm〉¥467,500/サンローラン クライアントサービス(サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ)