赤いワンピース ― いつか欲しい憧れの服 ―

 高校生の頃、母とショッピングに出かけた日曜日。赤いワンピースが目に入った。自分がいいなあと思った赤いワンピースには、いくつか種類があった。素材も全く違ってて、どちらか迷っている私に母は「試着してみたら?」と言う。試着してみた。着てみると、私がいいなあと思ったワンピースは、幼い私には少し大人っぽく似合わない。もう一つ母が持ってきたワンピースは似合うけど、私は欲しくない。迷う私に、母は「欲しい方を買いなさい。いま似合わなくても好きなら、きっと似合う日がくる!」と言った。

 私には衝撃的だった。悩んだ末、欲しい方(まだ似合わない方)を買ってもらった。自宅へ帰って、そのワンピースが大人っぽいので、口紅をつけて着てみた。どうだー、と自信満々で母に見せたら苦笑。そのワンピースは短大時代も着ていた。母に言われて、似合う日までずっと着ていた。

 私のファッション論は、この母から教えてもらった。いまでも私よりイキイキと若く、チャレンジ精神のある母には勝てません。

(N.I. 40歳 東京都)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は7月31日(日)20時公開予定です。

日本発のモード誌『SPUR』は参加型の新企画「SPUR ナショナル・ファッションストーリー・プロジェクト」を2016年4月より始動しました。このプロジェクトは、皆様のファッションにまつわるエピソードを、SPURが物語としてまとめていくものです。お寄せいただいたエピソードのうち、こちらのコーナーでご紹介させていただいた方には、同時に掲載する描き下ろしイラストをポストカードにしたものと、iTunesギフト1,500円分を差し上げます。性別や年齢は問いません。‪あなたのファッションとのエピソードを応募してみませんか?  詳しくは特設ページにて。


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