マーロン・ブランドのライダース ― いつか欲しい憧れの服 ―

 幼い頃から自己を主張せず、物腰がやわらかく、柔和な雰囲気だった僕。でも内心はそんな風に見られることがコンプレックスでした。年を重ねるにつれ、自分自身は変わらないものの、自分の装いに関しては、武骨な、男性的な、荒削りなものに憧れるようになりました。ファッションが素晴らしいのは、それを身に纏うことで違う自分になれるということ。そしていつも自分が憧れる誰かの姿を追い求めて、そんな人になりたくて、憧れの装いを求めるのだと思います。
 そんな僕が憧れ続けていたのは、クラシックなライダースジャケット。オシャレな人は必ずひとつはもっている、代表格のアイテム。街で見かける外国人や、雑誌やウェブで見るクリエイターの方々がオシャレに、でもラフに着こなしているのを見てずっと憧れていました。
 長い時間をかけて調べ、選び抜いた中でもひときわ胸に刺さったのは、映画『乱暴者』(’53)でマーロン・ブランドが着ていたもの。肉厚でタフ、男の中の男という表現がまさにぴったりな一着は、自分にとってスペシャルなものになりました。
 憧れの一枚を手に入れた次は、それを自分のものにしていくとき。それはまだ完全には僕のものにはなっていないかもしれませんが、これから長い時間をかけて、自分の一部にしていきたい。そんな風に思える一着です。

(Y.N. 30歳 東京都)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は9月18日(日)20時公開予定です。

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