レペットのバレエシューズ ― 大好きな人が着ていた服 ―

 私が大学生の頃、とても気の合う友達がいた。その子は真面目で、私とは真逆の性格。なのに、根本的に考えている事はお互いに分かり合えている、そんな仲だったと思う。

 新宿に一緒に買い物に行っている時に、彼女がある靴を見て「この靴欲しいな」とボソッと口にした。その靴は光沢のある、無駄のない美しいフォルムだった。その時私は靴に対しての知識がなく、ブランド名が分からなかった。家に帰って、パソコンを開きその靴を調べた。レペットというブランドらしい。大学生の私からしてみたら、少し値段が高かった。でも、その子にどうしてもプレゼントしたくて、お金を貯めて新宿に向かった。帰り道、自分への買い物ではないのにこんなに気持ちが高ぶるのは初めてだった。

 その子の誕生日に、その靴をプレゼントした。予想以上に喜んでくれ、毎日のように大学にその靴を履いて来てくれた。私はそんな彼女を見て特別な感情を抱いている事に気がついた。あぁ、素敵な靴が素敵な人を私の元に連れて来てくれたんだ、と思った。

 そして彼女は今でも私の特別な人として隣にいてくれている。あの時のレペットが、私の気持ちを運ぶ手紙の代わりとして彼女に届けてくれたのだと思う。また特別な時に素敵な靴を送り続けたい。あの時の胸の高鳴りを持ち続けながら。

(千葉県 A.I.)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は6月11日(日)20時公開予定です

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