コム デ ギャルソンのボーダー ― いちばん好きな服 ―

 クローゼットの夏物を出す。鮮やかな蛍光ピンクとオレンジのボーダー。プリントでなく布地を組み合わせた、シンプルだけどこの配色に心奪われて、初めて手にした憧れのコム デ ギャルソンのノースリーブ。学生の私にはまだ高くて、そしてお店の雰囲気に圧倒されて、いつも綺麗なガラス越しにお店の中の商品を見ていた事を今でも覚えている。いつものようにゆっくりと店の外から見ていると、鮮やかな配色が目に飛び込んで来て、手にとって見てみたい気持ちのほうが先行し、ドキドキしながらお店に入った。もうこれしかないと思って買った、初めてのギャルソン。

 その日から事あるごとに着ていた。お気に入りの一着になり、肩の部分に僅かに穴が開いてしまったほど。そんな時、祖母が洗濯後何も言わず、その穴が目立たずこれ以上大きくならないように縫ってくれた。気に入ったものは長く着られるように大事に扱う事を学んだ。肩の補修の跡を見るたびに、亡くなった祖母を思い出す。洋服を着る喜びと大切にすることをこのノースリーブを着る度に思い出す。憧れだった洋服からお気に入りになり、何よりも大切な一着になった。

(東京都 39歳 st

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は7月16日(日)20時公開予定です

日本発のモード誌『SPUR』は参加型の新企画「SPUR ナショナル・ファッションストーリー・プロジェクト」を2016年4月より始動しました。このプロジェクトは、皆様のファッションにまつわるエピソードを、SPURが物語としてまとめていくものです。お寄せいただいたエピソードのうち、こちらのコーナーでご紹介させていただいた方には、同時に掲載する描き下ろしイラストをポストカードにしたものと、iTunesギフト1,500円分を差し上げます。性別や年齢は問いません。‪あなたのファッションとのエピソードを応募してみませんか?  詳しくは特設ページにて。


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