真っ白なTシャツ ― 大好きな人が着ていた服 ―

 真っ白なTシャツ。今ではスタンダードなファッションアイテムで、素材やデザインはもちろん、普段着からお出かけ用まで何枚もクローゼットに入っている。私の実家はもともと農家で、小さなころは祖父母と両親と妹の6人家族だった。祖父は毎朝洗いたての、けっして真っ白とは言えないTシャツを着て畑へ出て、夕暮れ時に帰宅。土で汚れたそのTシャツを見て、幼い私はいつもしかめっ面をしていた。毎日毎日Tシャツなんてオシャレじゃない! Tシャツなんて安モノ! Tシャツ着ているおじいちゃんなんて嫌い! そう思っていたあのころから、祖父が亡くなり20年。Tシャツを青空に干すと、思い出すのはあったかい手、穏やかな声、わたしたちを守ってくれた優しい目……大好きなおじいちゃん。真っ白なTシャツは、私の人生の素敵なアイテム。

(北海道 36歳 いづみ)

※この企画は毎月最終日曜日20時に公開していきます。次回は7月30日(日)20時公開予定です

日本発のモード誌『SPUR』は参加型の新企画「SPUR ナショナル・ファッションストーリー・プロジェクト」を2016年4月より始動しました。このプロジェクトは、皆様のファッションにまつわるエピソードを、SPURが物語としてまとめていくものです。お寄せいただいたエピソードのうち、こちらのコーナーでご紹介させていただいた方には、同時に掲載する描き下ろしイラストをポストカードにしたものと、iTunesギフト1,500円分を差し上げます。性別や年齢は問いません。‪あなたのファッションとのエピソードを応募してみませんか?  詳しくは特設ページにて。


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