初めてのデニム ― 褒められた服 ―

 洋服を選ぶ時のマイルールがいくつかある。全体で見たときにシンプルで女性らしいこと、背が低いからサイズ感が最優先で、ヒールはマスト、ボーダーは着ない、etc. そのうちのひとつがデニムは穿かないということ。自分にはカジュアル過ぎて穿きこなせないという先入感が邪魔して、これから先も穿くことはないと思っていた。でも、25歳になって初めてワードローブにデニムが仲間入りした。

 挑戦してみようかなと思った理由は、当時付き合っていた彼の好きなタイプが“Tシャツ・デニム・スニーカーの女の子”だったから。私と間逆が好きな彼に、一言「かわいい」って言ってもらいたくて、旅先のアメリカで、日本で、何十枚も穿き比べた末に出合ったロンハーマンのデニム。やっと見つけた頃に彼と別れてしまい、結局見せることはなかったけど、好きな人の“好き”に少しでも近づきたくて、お店で、試着室で、部屋で、悩んだ記憶が懐かしい。そのデニムを初めて穿いた日は自分じゃないみたいでドキドキしたし、その日会う予定にしていた友人は待ち合わせで気付かないほど。何より、このデニムを穿くたびに会う人が褒めてくれることが嬉しかった。

 彼に喜んで欲しいという気持ちで始めたデニム探しだったけど、出会えたのは新たな自分だった。流行りのスニーカーに合わせるのはまだ抵抗があって、大好きなピンヒールを穿いてしまうけど、それも自分らしくていいんじゃないかなって思う。やっぱり私の好きなものも大切にしたいから。もう終わってしまった恋は、新しい出会いをくれた。デニムはこれから先、私の好きなものとして馴染んでいくんだと思う。

(Y.S. 25歳 東京都)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は10月30日(日)20時公開予定です

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