sacaiのニット ― いちばん好きな服 ―

 毎日、服によって、違う自分になれる。気持ちがリラックスしたり、シャンとしたり。ワクワクしたり。好きな服、欲しかった服を買ったら、早くそれを着たくてたまらなくて。明日は何を着て行こうってファッションショーをして。服のもつパワーって本当にすごい。服を纏うことって本当に楽しい!! だから、絶対に洋服に関わる仕事をする。18歳~20歳で服を学びながらそう決意し、20歳の時、憧れの会社で販売職として店頭に立つ事ができた。

 そこに立っているだけで嬉しくて仕方がなかった。現在では人気のsacai。当時、勤務先で、ファーストコレクションのニットを取り扱い、そのデザインにひとめ惚れ。まだまだお金のなかった自分は、姉に買ってもらい、たまに貸してもらっていた。“ニット嫌い”まではいかなくても、ウールより、コットンや、布帛のものが好きだった自分が、sacaiのニットだけは、どれを見ても欲しくてたまらなかった。

 sacaiがデビューして数シーズン目くらい、だったか。ウールとキュプラのニット、その同型のワンピース。高額でも欲しくてたまらなかった自分は、またしても姉と折半し、ふたつとも手に入れる事ができた。それから、やっぱりまだお金の無かった時代、たくさんは買えなかったけれど、sacaiの服が本当に大好きになった。

 39歳になった今。7年程前より、異業種の仕事に携わり、洋服の仕事からは離れてしまったけれど、今でもsacaiのこの2型の服は宝物で、私の家のクローゼットで、毎年冬には大活躍してくれる。この着で、古い言い回しかもだけど、本当にキマる。

 洋服は大好きだけれど、アイテムの中で、ニットが得意なほうではなかった自分に、その楽しさを教えてくれたsacai。これからも大事に、そして服を着る楽しさやワクワクする気持ちを忘れずに、この服と共に冬を楽しみたいと思う。

(神奈川県 39歳 S.S)

※この企画は毎週日曜日20時に公開していきます。次回は2月19日(日)20時公開予定です

日本発のモード誌『SPUR』は参加型の新企画「SPUR ナショナル・ファッションストーリー・プロジェクト」を2016年4月より始動しました。このプロジェクトは、皆様のファッションにまつわるエピソードを、SPURが物語としてまとめていくものです。お寄せいただいたエピソードのうち、こちらのコーナーでご紹介させていただいた方には、同時に掲載する描き下ろしイラストをポストカードにしたものと、iTunesギフト1,500円分を差し上げます。性別や年齢は問いません。‪あなたのファッションとのエピソードを応募してみませんか?  詳しくは特設ページにて。


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